ミッション16:「ドッグファイト&クライシス」
一撃の成功から、続けて残り一体となった爆撃機型フィアーの無力化を狙い。
鋭いループ機動から回頭しての、再度の進入攻撃態勢を取ろうとしていた屠龍と飛燕。
「ッォ!?」
しかしそこへ、妨害が入る。
二人の上空左方と、低空右方のそれぞれより。二体づつ計四体の戦闘機型フィアーが接近。
そして激しい熱光線を寄越し、十字砲火が二人を襲い掠めた。
「ッぅ、流石に本気になったかッ!」
護衛対象を早々に三分の二も撃墜され、流石に焦り本気となったのか。明確に激しく密になった敵からの攻撃。
それに屠龍は苦々しく言葉を零す。
「7-2、そっちで残りの爆撃型を追えッ。取り巻きは俺が引き付けるッ!」
《了ッ!》
屠龍は飛燕に命じ、直後に二人は別方向に散会。
飛燕はまだ残る爆撃機型を追う軌道を取る。
それにやはりというか、フィアーもまずは爆撃機型を追う針路を取った飛燕に反応。左方に見える一組が、それを追おうとする気配動きを見せる。
「おっと、行かせねぇよォッ!」
しかしそれには屠龍が立ちはだかった。
屠龍は進路の微調整から、その左方側のフィアー編隊をヘッドオン。
互いに頭を突き向けあう形となった双方は、互いの速度から急接近。しかし、それを仕掛けた屠龍の側に少しの有利が傾く。
瞬間。
飛燕は攻撃の意思を念じ。ギア・デバイスに備わり展開させていた、固定武装のM61A2 20mm機関砲を唸らせた。
仕掛けたのはブルファイト。
フィアー編隊のド頭にガトリング砲の砲火を遠慮容赦なく浴びせ。
二体のフィアーの内の片割れを、見事に砕き千切り、屠って見せた。
直後にはそのフィアー編隊の真上を、煽り掠めるようにすれ違い飛び抜ける屠龍。
「さっきのお返しだッ!」
その際に、今先程に正面攻撃を受けた意趣返しと言うように、そんな言葉を張り上げながらも。
同時に屠龍はまた一秒を惜しんでの旋回行動に入る。
鋭い機動で旋回反転行動を行う屠龍。
元より、今のFTGS装備の原形たるF-3Aは非常に優れた機体性能を持つ。
今はそれにFTGS化でさらに上乗せされたスペックが、恐ろしいまでの機体性能を実現し。
屠龍の身はまるでその場でスピンしたかと見まがうような、鋭い反転回答を一瞬の間に行って見せた。
(こりゃ、すげェな……ッ)
その機体性能、実現された機動にしかし一番に驚いたのは屠龍本人。
女の身体になってしまう事には、未だに抵抗を少なからず感じている屠龍だが。FTGS、性転換の生み出すそのパワー・エネルギー、力には。素直に感嘆を示さざるを得なかった。
しかしそれも束の間、屠龍はすぐに前方に意識を戻す。
見えるは、今の屠龍の一撃で相方を失い。動揺の色から慌て機動旋回に移ろうとしているもう一体のフィアー。
「残念だな、こっちのほうが早いッ!」
FTGSの性能を存分に生かし。先の一撃からしかし早くも再度、敵のその背後を取った屠龍。
彼(今は彼女)は、その事実にまたニヒルに言葉を口にし。
「――フォックス2ッ!」
次にはフィアーのロックオンを完了。攻撃の意思に言葉にし、ハードポイントに備えるAAM-5を撃ち出した。
AAM-5は主の期待に答え、発射から瞬く間にフィアーを追い到達。
その「ケツ」に食らいつき――炸裂。
動揺から迷いの生じていた様子のフィアーを、その体を弾き千切り、撃墜。墜落へとせしめてみせた。
「一機撃墜ッ、一機撃墜ッ!」
それをまた、通信に発し上げる屠龍。
「ッォ!?」
しかし、状況はその後に猶予や余韻を認めずに動く。
屠龍を襲ったのは、背後上方よりの熱光線の火線。
見れば、別方より追い付いたもう一組のフィアー編隊が。背後上方より屠龍を狙い、降下襲撃を仕掛けてくる姿が見えた。
「いいのかッ?俺と遊んでてッ!?」
しかし、爆撃機の護衛よりも自分の相手を優先した様子のフィアーに。
屠龍は回避のためのブレイク行動を行いながらも、また皮肉気に発する。
「――ッ!?」
しかし。直後にフィアーが見せた行動に、屠龍は目を剥いた。
高速降下から屠龍を狙っての、襲撃を仕掛けてきたかと思った二体のフィアーは。
しかし次には屠龍の傍を高速で飛び抜け、追い越し前方へ飛び去って行ったのだ。
「ッ!俺にはちょっかい掛けただけかッ!?」
向かうがてらに一撃をついでに寄越したのみで、やはり敵の優先するは爆撃機の護衛か。
そうフィアーの行動理由を推察し直し、悪態を吐く屠龍。
「ハッ!俺様にケツをわざわざ晒した事、後悔するんだなァッ!」
そしてしかし、爆撃機に追い付くことを優先して、屠龍自身に背後を晒したフィアーのその策を。
屠龍は愚策と断じ、煽る声を張り上げ。
次には向こう前方で背後を晒したフィアーを、照準に収めようとした。
「――ッ!」
しかし、直後に見た光景に。その〝異変〟に、屠龍は目を剥く。
自分を通り過ぎ、前方に居るはずのフィアーの二機編隊が、しかし〝一体しか見えない〟。
刹那に走った、嫌な予感。
残酷な事にそれはすでに、屠龍の側方で現実となっていた。
屠龍の真横の宙空――そこに在ったのは、消えたもう一体のフィアーの姿。
その頭、掻っ開いた顎を側方より屠龍に向けて見せ。熱光線の銃火火線を撃ち出そうとする様子。
――罠。
爆撃型フィアーに優先して向かい、愚かにも背後を屠龍に晒したと見せかけての。
ストールによる急減速からの、側方取り。
(しま――ッ!)
「嵌められた」。
次にはその事実に気づく屠龍。
無意識の反射で身体を動作させる力を入れるが、しかし同時にそれが間に合わない事は残酷にも察していた。
――墜とされる。
掻っ開かれ、熱源の発光を顎の内に見せるフィアーの、それを見せつけられながら。
屠龍は心のどこかである種の覚悟を抱く――
炸裂が。劈く音を伴う衝撃が巻き起こったのは、その直後だ――
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