EP13.聞き込み!グラディアともお話ししたよ!(1)

「とりあえず、そうと決まれば情報をまとめましょうか。」


パズルが手を叩いて提案した。カルロも同意して続ける。


「そうだな、まずは構成人数や拠点、次に入りそうな場所の目星などをつけておく必要がある。」


「手配書には、『マークスとジュナ』の二人しか書かれてないから、二人しかいないのかな?」アカシャが依頼書を見ながら呟く。それにソーンが付け加えた。


「いや、主犯がその二人ってだけで、手下はもっといるだろう。」

「妻と接触して、うちに盗んだ品を渡してきたのがその、マークスとジュナの二人組だったらしい。だが、規模から考えて、二人だけで行動してるとは考えにくい。」

「おそらく民間人に接触したり、義賊の『顔役』になっているのがその二人なんだ。だから他のメンバーがいないと考えるのは早計だ。」


「ってことは、ほんとのリーダーはあたしたちの知らない人で、奥に引っ込んでる可能性があるってこと?」アカシャがソーンに尋ねる。


「俺が義賊の頭領なら、そうするな。」

「ただ、規模が知れない以上、誰が本当のリーダーか特定するのは難しい。とりあえず『顔役』を潰すことに専念した方がいいだろうよ。」


指名手配書をひらひらさせて、パズルが付け加える。

「手配されているのはこの二人だけですからね。隠れリーダーが生き残っていて、義賊の一団自体を潰すことに失敗しても、この二人さえ討ってしまえば、報奨金はもらえます。」


カルロがそれに対して突っ込んだ。「なんだ、パズルにしては、ずいぶんシビアな意見じゃないか。」

パズルはそれに反論する。「事実を述べただけですよ。今の情報量では、義賊全体を潰すのは難しいです。それなら『顔役』だけでも潰して、戦力を削ぎ、報酬をキッチリもらうのが望ましいです。」

ソーンはそれに対して言った。「そうだなぁ。本気で国が困ってるなら、冒険者なんかに頼まねぇで、騎士団で対処した方がいいだろうよ。義賊全体を潰せなかったからと言って、それでケチ付けられるとは、考えにくいだろうな。」

アカシャが手配書を眺めて言う。「このマークスって人は、ワーウルフの男の人なんだよね?ジュナってのは、女の人の……ハーフリングなのかな?あんまり魔族のことわかんない。」

ソーンが解説する。「十中八九そうだろうな。写真が人違いじゃなきゃそうだろう。」

パズルが補足する。「どちらも『魔族っぽい見た目の種族』で、大して珍しい種族でもありません。ワーウルフとハーフリングの男女なんて、どこにいてもおかしくないと思いますね。」

「じゃあ、街中から探すのは無理ってことかな。その人達、どこにいるんだろうね?」とアカシャが言う。

カルロが尋ねる。「奴らは盗んだ品を、すぐに近くの村々に配ってしまうらしいな?ということは、彼らは拠点らしい拠点は持っていないのではないか?」

ソーンが反論する、「いや、二人だけならまだしも、手下を従えてるなら、拠点がないってことはないだろう。そのへんも情報が必要だな……」

ソーンはふと、自分が昼食を摂っていないことを思い出した。酒場の店員を呼んで、軽く注文をする。


「パンとミックスビーンズの煮込みのセットを一つ。それと、この義賊討伐の依頼を受けたい。関連する資料をありったけ持ってきてくれねぇか。」


店員は快く頷いて、しばらくすると、暖かい料理と、数枚の紙の資料が渡されてきた。共有する資料だから、食べこぼしたら罰金だと付け加えて、店員は業務に戻っていった。ソーンは昼食を摂りながら、資料に目を通していった。


「なるほど……義賊の活動範囲は、思ったより広いな。南方と西方には手を出してないみたいだが、北東ではかなり広範囲に被害が出てるらしい。」

南方出身のカルロも資料に目を通す。「南方はそもそも、政治体制が国によって違うからな。北方の者には勝手がわからないのだろう。西方は荒れていて金持ちは寄り付かない。しかし、それらを除外した北東では、かなり広範囲で活動してると言えるだろうな。」

アカシャが言う。「こんなに広い範囲で活動してるのに、拠点を特定するなんて無理じゃない?」

皆が少し考え込んだ後に、パズルが一つ閃いた。


「グラディアさんなら、何か知ってませんかね?」


たしかに、と皆が頷いた。グラディアの冒険者としての活動範囲は広く、人脈も広い。もしかしたら彼女なら何か役に立つ情報を持っているかもしれない、と思い至るのは自然なことだった。


「そういうことなら……ちょっと連絡してみるね。」


アカシャがグラディアからもらった魔法道具片手に、席を外す。初めての連絡がこれなのはちょっと味気ない気もしたが、そこは言葉とノリでなんとか誤魔化そうと思いながら、見よう見まねで、グラディアに連絡を取った。

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