EP9.あたしの初恋!!!(4)

翌朝、グラディアは冒険者としての依頼が入ったからと、アカシャとは別れることになってしまった。

ただし別れ際に、グラディアは一つの魔法道具を手渡して来た。見たことのないものだったそれを、アカシャは黙って受け取って、グラディアとはそこで別れた。

アカシャは仲間たちが泊まっている宿を探して、仲間たちと合流した。朝食の出ない宿屋だったため、アカシャはお腹を空かせていた。


「よう。昨日は楽しめたか?」


ソーンが真顔で茶化してくる。アカシャはそれに、起こったことを正直に話した。


「いっぱいお話はしてきたけど、深夜になったあたりで眠くなっちゃって……心配するようなことは起こらなかったよ?」


「そうか。まぁあの手の輩に、派手に騙し取られてねぇならいい方なんじゃねぇの。」


お腹空いた~とアカシャは朝食を注文し、三人のいる席に座る。

そして、グラディアにもらった、球の形状にいくつかのスイッチと、細かい穴がついた魔法道具について思い出していた。


「そういえばこれ、貰ったんだけど、何に使う道具なんだろう?」


その道具を見たパズルは、驚いて思わず口走った。


「!それ、二つでペアになっていて、片方が片方と通話できる奴ですよ!」


「通話……ってパズルがたまにしてるやつみたいなこと?」


「そうです、その道具を起動して話しかければ、相手に聞こえるって道具です。」

「それがあれば、離れたところでも話が出来ますよ。」


アカシャは「へー」とその意味を理解していなかったが、ぼんやりした様子にカルロがたまらず口を挟んだ。


「……それ、安価な品じゃないだろ。もらったのか?」


「?うん。」


「それは確実に脈があるぞ!!!」


「えっ!?あっ!!そっかぁ!!!」


アカシャはようやくグラディアから向けられた好意を理解し、顔が真っ赤になった。その様子を見て、男三人は釣られて上機嫌になったり、アカシャを茶化したりした。


「やるじゃないか、どうやって口説き落としたんだ?」


「若いね~春だねぇ~」


「わわわ……おめでとうございます?」


アカシャは三人に揉みくちゃにされながらも、初恋の成就に確かな喜びを感じていた。

水鏡川はもう目と鼻の先。アカシャの目的達成にも、きっと一歩近づいたのだろう。

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