EP9.あたしの初恋!!!(2)

 踊り子に手を引かれ、アカシャは夜の繁華街に、初めて足を踏み入れる。宿屋に併設されていたり、冒険者の依頼場も併用している酒場とは違う、大人の社交場のような酒場の看板が並ぶ街に連れられて行った。


「あなた、ずいぶん若く見えるけど、お酒は飲めるの?」


「ま、まだ飲めない、です。」


「そうなの。じゃあ、ここにしましょう。」


そう言って踊り子は、酒場の一つの扉を押した。薄明かりが照らす店内はムーディで、かつ寛ぎやすい内装をしていた。

踊り子はテーブル席を希望し、二人は向かい合って座った。「好きなものを頼んで」とアカシャにメニューが差し出されるが、アカシャは緊張で何が飲みたいどころではなかった。


「あのっ……お姉さんは、名前、なんて言うんですか。」


「グラディアよ。あなたは?」


「あ……アカシャです!」


「そう、可愛い名前ね。」


飲み物と軽食をなんとか注文し、それが届くのを待っている頃、踊り子……グラディアは、アカシャのことを知りたいとばかりに、色々と質問してきた。


「この街に住んでるの?それともよそから来た人?」


「今日この街にやって来たの。冒険者だから、ここまで旅してきたんだ。」


「へぇ、冒険者なの。人間に見えるけれど。」


「よく言われるけど、あたしほんとは魔族なんだ。人間のママに拾ってもらった渡りだから、あんまり魔族のことには詳しくないけどね。」


「あらそうなの。意外と事情が複雑なのね。」


グラディアは、それ以上アカシャの事情に立ち入ろうとはしなかった。まさか嫁探しに冒険者になったなどとは露ほども思わなかった。

グラディアは話題を変えつつ、話を続けた。


「踊り、気に入ってくれてありがとう。女の子に気に入られるのは珍しいから、気になっちゃった。」


「う……うん!すっごく綺麗だったよ!」


「女の子とデートするの、もしかしたら私も初めてかも。いつもは男の人ばかり相手にしてるから。」


「……グラディアさんは、いつもこうして踊って過ごしてるの?」


「たまに踊るけど、いつもじゃないわ。私も冒険者をしてるの。依頼の切れ目とか、お金が欲しい時に、こうして踊って人を誘うの。」


「誘う……って?」


「あら、気づかずについて来ちゃったの?」


何のことかわからないアカシャを横目に、注文した品が運ばれてくる。揚げ菓子とアップルソーダ、グラディアが頼んだジンジャーカクテルが机に並べられ、従業員が去った頃に、グラディアは口を開いた。


「一晩ベッドの上で過ごすのよ。そうやってお金稼いでるの。」


「えっ……!?それじゃ、あたしを誘ったのって、そういうこと……!?」


「まさか。うぶな女の子を攫ってパクリ……なんて、無作法なことしないわよ。」

「ただ面白そうだったから……いいえ、そうね。」


グラディアは飲み物で口を潤した後に、続けた。

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