EP6.人間と魔族を仲間に入れたら、やっぱり喧嘩し始めた件について(3)
馬車では、アカシャとカルロと、綺麗に解体された兎肉が待っていた。パズルは落ち着いた様子の二人を見て安堵する。
「お疲れ様です。ご飯作っておくので、二人はその間に洗濯でもしてきてください。アカシャさん、手伝ってくれますか。」
「はーい!」
アカシャの服はあまり汚れていなかったのに対し、カルロとソーンの服は、解体で跳ねた血で汚れていた。アカシャはカルロに一瞬視線を送りつつ、パズルのもとへついていった。
汚れた服を脱いで、別の服に着替える最中、二人っきりの緊張感が流れていた。カルロが先んじて口を開こうとする。
「あの……私は……。」
「悪かった。俺が大人げなかった。」
意外にも、先に謝罪したのはソーンであった。カルロはその一言で概ね意図を汲み取りつつ、言葉を返す。
「私も……至らないところがあった。君たちに対して、理解が浅かったようだ。」
ソーンはその言葉に対して、驚きの表情を見せた。もしかしたら本当にこいつは理解者になるのかもしれないと思った。けれどそれを裏切られるのが嫌だったため、その想いを口にはしなかった。
「……近くに水場がある。そこですぐ洗って、戻るぞ。」
「ああ。」
二人がそれ以上言葉を交わすことはなく、お互いに沈黙を続けながら、洗濯を終えた。
シチューのいい匂いが周囲に漂っている。洗濯から戻れば、人数分のシチューと堅パン、ピクルスが皿に並べられていた。
「人魚ちゃんには少し冷めてから食べさせるとして……それでは。」
「「いただきます!!」」
アカシャとパズルは、元気よく豪勢な昼食に手をつけ始める。ソーンもいただきますと口にして、抵抗なく首狩り兎のシチューを口に運んでいる。
「……いただきます。」
首狩り兎のシチューには、いつの間に戻したのか、干しニンジンと干しタマネギが入った、しっかりしたものであった。肉の焦げた色がシチュー全体に回り、美味しそうな匂いを漂わせている。そして、よく焼かれた骨付き肉がゴロゴロと入ったシチューは、王宮暮らしの頃でも中々食べられないような一品であった。
カルロは覚悟を決めて、兎肉をガブリと口にした。周りがカルロの反応を伺う中、カルロは素直な感想を口にする。
「……美味しい。」
首狩り兎の肉は、普通の兎肉とほぼ変わりがなかった。あっさりとした臭みのない味わいに、下味の塩胡椒がよく効いている。
それがタマネギの風味を纏い、野外で調理したとは思えない逸品になっていた。
その反応を見て、三人は安堵のため息を漏らした。
アカシャが空気を和らげるように言う。
「魔物食初体験、見事クリアー!だね!これで一人前の冒険者に一歩近づいたんじゃない?」
「ああ、そうだな。まだまだ覚えるべきことは多いようだが。」
先程とは打って変わって、和やかな空気が食卓を包んでいた。ソーンは心の中で一言呟いた。
「ま、種族がごちゃごちゃして、賑やかな旅路ってのも、悪くねぇのかもな。」
こうして彼らは、思わぬご馳走に舌鼓を打ちながら、旅路を引き続き歩むのだった。
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