EP4.音楽家助けたら、めっちゃ高慢だったwウケるw(1)
旅路を行き、そろそろ街に近づいてくるかと行った頃だった。その街には特に用事がないので素通りしようという話になっていたところ、風に乗って綺麗な音色が聞こえてきた。
「ね、これ何の音だろう?綺麗だねー!」
「そうですね、何かはわかりませんが、弦楽器でしょうか。綺麗ですね。」
音の方に視線をやると、草原の真ん中に人が佇み、何か楽器を弾いているじんぶつが遠くに見えた。三人はその音に密かに耳を傾け、その音色を楽しんでいた。
しかし、そちらの方を見ていると、音色は突然途切れ、その人物が突然叫びながら走り出したのが見えた。その後方をよく見ると、彼が狼の群れに追われているのが見えた。
「……あれ襲われてないか?」
「そうだね。せっかくだし……助けよっか。」
「チッ……まぁここで獣の餌になっても寝覚めが悪いしな。」
アカシャとソーンは座席から降り、楽器奏者の元へと向かった。奏者はというと、情けなく絶叫しながら狼に背を向けて走っている。二人とも、あれでは襲ってくださいと言っているようなものだと感じた。
ソーンは狼の注意を引くため、咆哮をあげた。狼たちは驚き、ソーンの方を警戒する。
「おにいさーん!こっちこっち!」
アカシャは剣をぶんぶんしながら、奏者にこちら側に避難するよう声をかける。意図が通じたのか、奏者はこちらの方へ走り出してきた。
「きみた、ち、ゼェ……助かっ……ゼェゼェ」
「いいから!早く馬車に乗って!」
息も絶え絶えといった奏者とすれ違いつつ、二人は狼の群れに対峙する。無謀な狼のうちの一匹が、アカシャ目掛けて飛びかかった。
「わっ……とと、進ませないよ!」
飛びかかりをローリングで回避しつつ、狼の脇腹に一太刀入れる。重傷を負い、ふらついた狼の元に、ソーンがとどめの一撃を入れる。
「恨むなよ」
ソーンは大鋸を振り、狼の頭と胴体を切り離した。それを見た狼たちは、一目散に去っていった。
「これで一安心かな。」
「だな、こいつの毛皮は小銭くらいにはなりそうだ。剥いだらすぐ合流する。」
「はーい、あたしはお兄さんの様子見てくるね。」
そう言ってアカシャは馬車へと戻った。馬車では、まだ息の整っていない楽器奏者が座席に座っていた。彼は魔族らしい特徴はなく、どうやら人間のようだ。彼はアカシャが戻ってきたのを見るなり、襟を整えて、誇らしげな態度を取った。
「やぁお嬢さん方!先程は助けていただいてありがとう、心から感謝するよ。」
「そんな、気にしなくていいよ~。」
「この私を迷うことなく助けるとは……君たちも見る目が、いや聴く耳があるようだね!」
「……へ?」
楽器奏者の青年は、助けられたにも関わらず尊大な態度で言った。
「この高貴なる、カルロ・フォン・ヴァージニアの救命を即座に判断するとは!素晴らしい冒険者たちだ!」
「はぁ……。」
パズルもアカシャも、なんだこいつと言う目で、楽器奏者……カルロを見ていた。
「戻ったぞ。それでそいつどうするんだ。」
ソーンが毛皮を持って馬車に乗り込む。アカシャとパズルは顔を見合わせつつも、パズルが提案した。
「また襲われても面倒ですし……予定外ですが、街に寄って、送り届けましょうか。」
「おお!助けてくれただけではなく護送までしてくれるとは!お礼に渡せるものは持ち合わせていないが、代わりに一曲……」
「いやいいから!また変なの来たら面倒だし!」
楽器を構えようとするカルロを、アカシャが止めた。カルロからめんどくさそうな雰囲気を感じていたので、あまり貸し借りを作りたくないというのが、三人が暗に意見が一致しているところであった。カルロは少し不服そうな顔をしたが、命の恩人の指示には素直に従うことにした。
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