EP4.音楽家助けたら、めっちゃ高慢だったwウケるw(2)
街までカルロを送り届け、せっかく街に寄ったのだからと軽く物資の補給をして、その晩は宿屋に泊まることにした。宿屋の広間でアカシャたち四人が夕食を摂っていると、広間の一角から、昼間に聞こえてきた、あの弦楽器の音色が聞こえてきた。
音色の方を見ると、カルロが路銀稼ぎに一曲弾いているところだった。軽快で楽しげなメロディーが広間に響き渡り、ところどころリズムに乗る靴音が聞こえてくる。
アカシャもそれは例外ではなく、曲に合わせて踊り出したくなってきた。周りを見渡せば、酒が回っているのか、抑えきれずに踊り出している人もいる。アカシャがうずうずしながら足をパタパタさせていると、パズルが「人魚ちゃんは見てますから、踊ってきてもいいですよ。」とアカシャに囁いた。
アカシャはそれを聞いて立ち上がり、少し開けた場所で思い思いのステップを踏んだり、見ず知らずの人の手を取って踊ったりした。人魚も水面を音楽に合わせて鳴らしたり、パズルとソーンは座りながらも手拍子を鳴らしたり、各々が思い思いに突然のダンスパーティを楽しんでいた。
何曲か演奏が続いた頃、アカシャはふとカルロと目が合った。カルロはアカシャににこやかに微笑みかけてきた。それを見てどこか安心したのか、アカシャは心ゆくまで踊り続けた。
一時間ほど明るい音楽が奏でられ続けた頃、カルロは一礼し、楽器を肩から下ろし、広間の群衆に紛れ込んだ。それが宴の終わりだと理解した客たちは、少し物足りなさそうにしながらも、各々の席に戻っていった。
アカシャもそれを見て自分の席に戻ろうとした。その時、自分の手を取る者がいた。カルロだった。
「少しいいか」とカルロはアカシャに告げる。何だろうと疑問を持ちつつも、特にカルロに警戒心を抱いていなかったアカシャは、カルロに連れ出されるまま、宿屋の外に出た。
「頼む!私を君たちのパーティに入れてくれないか!」
カルロの要件はその一言であった。アカシャは少し目を丸くしつつも、なぜ自分たちのパーティに入りたいのか尋ねた。
「単純に、路銀が尽きそうなんだ。さっきみたいに許可を得て演奏会ができればいいが、このやり方では正直安定しない。」
アカシャはその理由には理解を示した。彼の音楽の腕は素晴らしかったが、それだけで食べていくことは確かに難しいことのように感じていた。
しかし、冒険者のパーティは戦闘が伴うため、戦闘の出来ない者に任せる仕事はない。危険な仕事だし、パーティで何の仕事ができるのかと尋ねてみた。
「さっきの曲を聞いて、皆踊り出してしまっただろう?一部の曲には、ああして人の戦闘能力を強化したり、傷を癒したりする力があるんだ。」
「だから味方を鼓舞したり、敵を弱体化させることが出来るはずだ。だからどうか、入れてくれないか……!頼む!」
アカシャはそれに対して悩ましく思った。確かに、今の三人のパーティは、冒険者の一団として充分な人数とは言い難かった。パズルは性格上戦闘に向いていないし、人魚という守らねばならない存在もいる。戦力が少しでも増えることは、パーティにとって有益だろうと判断した。カルロの曲の力も確かなものだと感じていた。
しかし、それはアカシャが決められることではないことも確かだった。カルロを加入させられるかどうかは、雇用主であるパズルの懐事情次第なので、最終的な決断はパズルが下すことになるだろうと考えた。
それを踏まえて、アカシャはカルロに尋ねてみた。
「提案はしてみるけど、あたしも雇われてる立場だから、なんて返ってくるかわかんないよ?」
「え、君が雇い主ではないのかい?」
「ううん。あたしはただの冒険者。雇ってくれてるのは、エルフのパズル君だよ。」
「そうだったのか……そんなことがあるのか……。」
戸惑っているカルロを見て、アカシャはほんの少しだけ、彼の態度に棘があるように感じていた。アカシャはカルロに問い詰めてみた。
「あなたを助けた時、前線に飛び出したのはあたしとソーンだったよね?あたしは前で戦ってたのに、なんであたしが雇い主だと思ったの?」
「それは当然、君が人間だからだ。人間と魔族がいたら、人間が雇い主だと思うだろうよ。まさか魔族に雇われてる人間がいるなんて、誰も思わないだろう?」
カルロは言葉通り、それが当然であるかのように発言した。そこに何の悪意もなく、ただ当たり前のように、魔族が人間の下にいるものだと、カルロは考えていた。その意識の差はアカシャにもはっきりと伝わり、それがアカシャの神経を逆撫でした。
「……そう。やっぱり提案するのやめた。悪いけど、他を当たってくれる?」
「そんな……!いや、すまない。人手が充分なら、他を当たることにするよ。」
アカシャは口を一文字に結びながら、宿屋に戻った。
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