EP3.馬車上トーク!ソーンはまだあたしのこと警戒してるみたい。(2)

しばし沈黙が流れつつ、ソーンがアカシャに尋ねる。


「……母親がいるのか。」


「うん!あたしを拾って育ててくれたんだよ!」

「あーでも、ちっちゃい頃はあたしも自分のこと人間だと思ってたかも。ほとんど魔族に見えないし、ママも周りも人間ばっかりだったから、ママにあなたは魔族なのよって言われるまで気づかなかったなー。」


「……そうか。」排泄しないのに?とソーンは思ったが口に出さなかった。


「……魔族だとわかって、傷つかなかったのか。」


ソーンは重苦しげに尋ねる。その声音には、魔族と人間を分つ、壁の存在が隠れていた。しかしアカシャにはその壁は見えていないようだった。


「?ぜーんぜん!あたしはあたしだもん!」

「ママは優しいし、お友達もいっぱいいるし、あたしが魔族だからって何も変わらないでしょ?」


アカシャの目は純粋で真っ直ぐだった。その純真さに、ソーンは辟易しつつ、しかし心の奥底では惹かれていた。


「あとは、綺麗なお嫁さんがいれば完璧!パーフェクト!」


「……お嫁さん?」本日三度目の疑問符がソーンの頭に浮かぶ。パズルが説明するように口を挟む。


「お嫁さんが欲しいしなりたいから、花嫁修行してるんですって。冒険者になったのもその一環だとか。」


ソーンは一瞬目をまん丸にした後、思わず声をあげて笑い出してしまった。ソーンにとって、腹の底から愉快で笑ったのは久々のことだった。


「はは!ははは!」

「呆れた、そんなことのためにこんな危ねぇことやってんのか!?」


「呆れたって何よー!あたしにとって、人生で一番大事なことなんだから!」


「はは、あっはははは!はー。」

「そんな馬鹿で純粋な人間がいるとはね。」


ソーンの口角は自然と上がっていた。ソーンが他人に心を開くことがどれだけ珍しいことか、アカシャは理解していなかったので、アカシャはむくれていた。


「馬鹿にしないでよねー。こっちは真剣なんだから!」


そんなやり取りをしているうちに、荷台から赤子の泣き声が聞こえてきた。人魚が空腹を訴えているようだ。アカシャが座席から立って人魚に駆け寄る。


「お腹空いたの?ご飯にしよっか!お水は汚れてない?」


その様子を一瞥しつつ、パズルも空を見る。


「そろそろ日も落ちてくる頃ですし、今日はここらで野営の準備をしましょうか。」


二人はその言葉に賛成し、馬車を止め、各々野営の準備に入った。

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