EP2.狼男との出会い。無愛想だけど、きっといい人だよ!(4)

「……なるほど?魔法石ゲートは見つけたが、そこは既に街エルフが独占してて、魔法石は取ってこれなかったと。」


ソーンは宿屋の広間で二人の報告を聞いている。既に日はそろそろ傾こうとしている時だった。


「はい……。ですので、交換する品は何か別のものにしてもらえると……。」


パズルが申し訳なさそうに頼み込む。その様子を見て、ソーンはばつが悪そうに答えた。


「仕方ねぇな……お前らに出来るとは思えんが……人喰い植物の果実でも妥協してやるよ。」


「人喰い植物ですか。最近よく見ますよね。」


「ガイライシュだかイデンシオセンだかなんだか言って、国が積極的に駆除して欲しいんだとよ。果実が腐らないうちに役所に持っていくと、討伐褒賞っていくらか貰えるし、種も売ればそこそこの値段になる。」

「まぁそこら辺にいるのに、駆除できないほど強力な魔物でもある。お前らに倒せるとは到底思えないが……。」


「アカシャさん、倒せそうですか?」パズルはアカシャに視線を送る。


「まっかせて!人喰い植物くらい、サクッと倒しちゃうんだから!」


アカシャは自信満々な一方で、ソーンにはそれが無謀さに見えた。ソーンは気になってパズルに尋ねてみた。


「お前ら、何だってそんなに急いで桶が必要なんだ?」


パズルは答える。


「この辺りで渡ってきた人魚の子を、水鏡川まで送るのに必要なんです。直接触れると火傷させてしまいますから。」


それを聞いてソーンは呆気に取られた。この内陸に渡ってきた、不運な人魚の子供を生かすためだけに、そこまでするのか?と、パズルの内心を飲み込めずにいた。

そうしているうちに、二人は人喰い植物の討伐に向かってしまった。ソーンは二人が駆けていく背中を見て、一人呟いた。


「自分の子でもねぇのに、酔狂なこった。」




「見つけたよ!人喰い植物!」


時刻はもう夕暮れ時になり、アカシャとパズルはようやく人喰い植物を見つけることができた。


「まずあたしがそーっと近づいて、目を潰すね。暴れて蔓を伸ばしてきたら、パズルは火球で援護をお願い。」


パズルは頷き、背後から援護の構えを取る。

アカシャは音を立てないように、そーっと人喰い植物に近づくが、地を這うように、人喰い植物の蔓がアカシャの背後に迫っていた。


「!アカシャさん!後ろです!」


アカシャがパズルの声に気づいて振り向くや否や、人喰い植物の蔓はアカシャの右腕に絡みつき、関節と逆方向に腕を曲げようとする。


「!……アカシャさん!」


「パズル!あたしごと焼いていいから、火を飛ばして!」


「でっ、でも……!」


「いいから早く!」


パズルは躊躇したが、アカシャを捕えんとする人喰い植物に向かって、炎の呪文を唱えた。しかし、人喰い植物は水分に満ちているのか、その炎はアカシャの服の裾を軽く焦がしただけだった。


「そんな……!」


狼狽えるパズルに対して、アカシャは声をかけ続ける。その隙に、アカシャは左腕も拘束され、身動きが取れなくなってしまう。


「何か他にないの!?あたしはどうなってもいいから!」


「わわわ……衝撃波を放つ魔法ならありますが、あれは制御が難しくて……。」


「じゃあそれ使ってよ!早く!」


「無理です!巻き込んでしまいます!」


そうして揉めているうちに、人喰い植物はアカシャの右腕の関節を外した。痛みにアカシャは悲鳴をあげる。

パズルが覚悟を決めて、衝撃波の魔法を唱えようとした時に、側方から人影が現れた。

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