EP1.花嫁を探す少女(2)

「大丈夫!?危ないから下がってて!」

軽快な声で少女はパズルに警告する。パズルは反射的に頷き、杖を拾って少女から距離を取った。

眼球の一つを貫かれた双頭獣は、怒りに震えるがままに、少女を引き裂かんと腕を振りかぶる。

しかしそれを少女は華麗にかわし、少女のレイピアが、双頭獣の右手と右側の脳天を正確に貫いた。


「すごい……。」


少女の戦いぶりに、パズルは思わず感嘆の声を漏らした。

双頭獣は痛みで悲鳴のような咆哮をあげ、使い物にならなくなった右半身をひきずりつつ、やけになったように左腕を振りかぶる。


「この一撃で……サヨナラだよ!」


少女は左腕の一撃をかわし、その隙に双頭獣の左側に身体を傾け……双頭獣の脳天を、眼孔ごと貫いた。

双頭獣は断末魔をあげ息絶える。少女は魔物を確実に仕留めたことを確認すると、パズルに近づき、手を差し出す。


「おにーさん大丈夫?怪我はない?」


少女の碧眼が、まるで救世の光のように瞬いたと、パズルは感じていた。

 パズルは少女に差し出された手を取り、礼を述べる。


「助けてくれてありがとうございます。あなたが来てくれなかったらどうなっていたことか……。」


「いいっていいって~、おにーさん、全然戦えなさそうなのに森に入っていくから、入った時から心配だったもん!」

「おにーさんはなんでこの森に入ったの?ぶっちゃけ危ないよ?」


「うぐ……僕はゲートキーパーで、ゲートを閉じに行くところだったんです。」


「そうなんだ~。その子は?もしかして『渡って』来た子?」


いつの間にか泣き止んでいる人魚の手を少女はつつく。人魚を抱えなおしながら、パズルは答えた。


「おそらく……いや、ほぼそうだと思います。僕もさっきこの子を拾ったばかりで、扱いには困ってるんですけど……。」


「ふーんそうなんだ。」

「心配だから、ゲート閉じるまでついてってあげるよ!」

「あたし、アカシャ!あなたは?」


求められるがままに、パズルは自己紹介をする。


「僕はパズルです。両手が塞がってますから、お言葉に甘えて、ご同行よろしくお願いします……。」

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