第49話 「加藤カヒ」ってどんな子?
カヒ「あれっ? お題にわたしの名前が入ってるよ? 『加藤カヒ』ってどんな子って言われても……」
アスミチ「バノのつぎがカヒってことなんだろうね」
カヒ「あ、そっか。バノの話があったからなんだね。でもあんまり話すことないよ」
パルミ「いんじゃね? 時事ネタとかにカヒっちのコメント入れるとかでも」
トキト「物語が執筆されている時間と、俺たちの生きている時間って同じじゃないだろ。時事って言ってもなー」
ウイン「ここはメタ空間だからね? いいと思うよ」
バノ「そういうことにしておこうか、みんな。カヒについては物語の上でほんのり明かされていることもある。そこから入らないか?」
ハートタマ「お、そんならオイラから、カヒはピッチュでもねえのにドンの声が聞こえたりする感応の力を持っているよな。オイラのSOSをキャッチしてくれたのもカヒだったぜ」
カヒ「あ、それはちょっとうれしいことだね。わたし、そうだね、そこはみんなの役に立ってる」
ドン「ボクの声がいちばん遠くでも聞こえるのがハートタマをのぞけばカヒお姉ちゃんだよね」
カヒ「そうだよ! えへへ。自分の努力のせいじゃないから、自慢にならないかもしれないけど、うれしいよ」
ウイン「そうは言うけど、カヒがいちばん、声を聞こうとしている子だってことは間違いないよ。それが感応の力にあらわれているんじゃない?」
パルミ「カヒっちの次に力がありそうなのはウインちゃんだよねー」
カヒ「そうだよね。ウインと二人でなにかに気づくことって多かった。心細くならないですんだよ。ウイン、ありがとう」
ウイン「あはは。それこそ努力の成果ってわけでもないし。でもうん、お互いに、よかったよ、カヒと同じだから私も不安にならずにいられる。いろんな気配とか、そういうのを感じてもね」
アスミチ「不思議なのは、異世界効果じゃないってところだよね。カヒが感知するのって地球にいたころからでしょ?」
パルミ「あ、そーだよ。カヒっち、ご先祖様の夢を見たんっしょ? しかもほんとうにあった出来事」
カヒ「うん。そうなんだよ。ただ、家には精霊のお守りっていう、その頃から伝わった宝物もあったし、よくあるご先祖の霊……っていう話じゃないかなって思ってた」
トキト「あるよな! 先祖が『無念を晴らしてくれええ。江戸時代、ワシは結婚もせずにさびしく死んだ。あいつのせいだ。子孫のお前が、この無念を、あいつの子孫にぶつけてくれええええ』」
バノ「結婚できなかったのに子孫がいて、意外にすごいな、その亡霊」
ウイン「ちゃんと子育てしたとも思えないのに、自分の無念を晴らしてほしいなんて、ちょっとわがまま亡霊さんだよね」
パルミ「つか、江戸時代から今までなにしてたん? 目覚ましかけとけ、亡霊っち」
カヒ「亡霊まであだ名なんだね!」
アスミチ「パルミの祖先の亡霊が出たら、全員そんなふうに呼んでくるのかな……」
パルミ「決まってるっしょ……アスっち……お前の祖先が、あたしを呪ったっしょー……いちまーい、にまーい、さんまーい、はっくしょん、あれー、どこまでかぞえたか、わかんにぇー……」
トキト「ぶはーっ、そんな亡霊ばっかりだったら出てきてもらったほうがおもしれーよな」
ウイン「ちょっと、カヒの祖先の話だったでしょ!」
パルミ「カヒっちの祖先はでてこなかったん?」
カヒ「そうだね。幽霊とか亡霊とかは、わたしは感知できないみたいだよ。トキト、残念ー……よんまーい、ごまーい、ごまおむすびー……」
パルミ「ばぶっ。なんかカヒっちが前フリなしでギャグるの、ツボ、ツボにくる」
バノ「2024年12月8日の作者近況では、カヒが十四歳に成長した姿の絵が公開されているが、どんな感想かな?」
アスミチ「そうだね。どんな中学三年生になりたいとか、あるのかな、カヒ」
カヒ「あー、髪の毛は白いままでかっこいいな、地球に戻ってもこの色でいいかも、って思うよ」
トキト「背も伸びて、俺とウインより年上で、バノとほぼいっしょだもんな。中学生らしい感じだった」
バノ「ふむ。パルミの言う通り、顔立ちも美形で、とても目にいいね」
カヒ「わ、王子様やってた人に言われると、なんか意識しちゃうね」
アスミチ「ああいう感じに成長するのが理想?」
カヒ「うーん……外見は、ほら、自然に育つだけでしょ? 問題はなかみなんじゃないかな」
バノ「至極当然だね。カヒの理想の内面的成長っていうのは、どんなものかな? 差し支えなければ質問したい」
カヒ「あー……、これ、真面目に言うんだからね?」
パルミ「ひゃっ? なんであたしを見たのん? あたしも、真面目な話、つきあうよ? カヒっち、言っていいよ」
カヒ「あのね、わたしは、五人みんなみたいに、なりたい」
ウイン「わぎゃっ」
トキト「おーっ!」
パルミ「にゃん!?」
アスミチ「あれっ、五人って、同い年のぼくも入ってる!?」
カヒ「当然、入ってるよ。アスミチは自分がとてもすごい子だってわかってないところがあるよね」
バノ「それは、あるな。私もけっこうアスミチに高い評価をつけているつもりなんだが……本人は真に受けないようにしているフシがある」
ウイン「バノちゃん、それはしょうがないよ。アスミチは言われても、バノちゃんほどじゃない、って思っちゃうんだと思うよ。知識とか、考え方とか」
トキト「俺も年上のことはわかんねえけど、バノは十五歳の高校一年生としては、だいぶ別物らしいぜ。アスミチ、バノと比べるのはやめといたほうがいい」
アスミチ「いや、比べているわけじゃないけど……じゃなくて、今回はカヒの話にしておこうよ」
トキト「おっとそうだった」
パルミ「アスっちの話が『がぶり、ぎゃん』の前になるのか、あとになるのかで、話の方向も違ってきそうだにゃー。楽しみ、にしし」
アスミチ「うわっ、ぜったいに『前』にしてほしい!」
ウイン「カヒに、五人みんなみたいになりたいって言ってもらえて光栄だけど……どういうことか、もうちょっと言ってもらっていいかな?」
カヒ「そんなに言うことはないけど……ほら、みんな、ほかの人にはないところがあるでしょ。わたし、よくばりなんだと思う。そのどれも、ほしい。ああいうふうに自分がなれたらなって思う」
バノ「ほう、トキトの運動能力、戦闘勘とかも、含むのだな」
カヒ「もちろん含むよ、バノ。当たり前すぎて言う必要ないけど、バノのすごいところ、賢いところも、アスミチだけじゃなくて、加藤カヒも、見習いたいって思ってるからね」
バノ「これは、カヒ姫。もったいなきお言葉、天にも昇る心地にござります」
カヒ「あは。バノ、たまーに王子口調になるけど、ほんとは王子やってたときもそんなふうにしゃべってなかったんでしょ?」
バノ「あ、ばれてた? もちろん、私は口調はほとんど変わらなかったな。冒険者をしていたときも、王子のときも。君たちの前でもね」
トキト「それはわかってた」
パルミ「だねい」
ウイン「え……王子口調で、王子ファッションで、王子歩きで王宮を歩いたり……舞踏会でシンダーエラちゃんと踊ったり……毒リンゴの解毒したり……してないの……?」
カヒ「わざとだと思うけど、いろいろ物語が混ざってるよね、ウイン」
ウイン「うん、物語のことだとはわかってたけど、なんとなく王子様やってたときに、ちょこっとはそういう感じのエピソードがあって、王子口調で話す場面があったような気がしてた。芝桜ウイン、早とちりであります」
アスミチ「ちなみにシンダーエラというのはシンデレラのことだね。シンダーが灰、それに人名をあらわすエラ、くっつけてシンダーちゃん、みたいな。シンダーエラ、シンデレラ」
パルミ「にゃにっ。そんにゃ早口言葉みたいな名前だったレラ!? 生きてるときから死んだーだったなんて、初耳レラ」
ウイン「フランス語でサンドリヨン。ガラスの靴やカボチャの馬車を物語に取り入れたお話を有名にしたのがフランスのペローだから、この名前も有名だよね」
バノ「日本語に翻訳されると和名がつけられることも多いが、シンデレラは『おしん』だそうだ。有名なテレビドラマのタイトルはこれに影響を受けたのかもしれないね」
カヒ「はーっ、やっぱりアスミチも、ウインも、バノもすごいよ。三人とも本を読むから物知りになったんだよね」
トキト「ウインなんて授業中にまで本を読むのがやめられなくて怒られたことがあったぜ」
ウイン「あったよー。それ家庭訪問でも言われちゃってさ。もう絶対にやらないって決めた」
バノ「ちなみに授業中に読書がやめられなかったのはマスター(作者)の小学生のときのほんとうのエピソードだそうだよ」
パルミ「ぎゃっ、また作者がしゃべったのん!?」
バノ「しゃべらずとも、すべてが書かれた本、紫革紙面が語っている」
カヒ「あはは。なんかすっかりギャグになったね、紫革紙面にはへんなことも書かれてるって」
バノ「うん。ごめん、ほんとはマスターの過去まで書いてないんだ……うそダヨ」
ウイン「知ってたよ! しゅんとならなくていいよ、演技だったとしても元気だして!」
バノ「だしょだしょ、バノっち、ほら、空気ポンプをこのパルミ足で踏んで空気送るから。シュコー、シュコー、シュコー」
トキト「おわっ、バノがパントマイムみたいに肩とか背中とか持ち上げてふくらんできた」
カヒ「あっはははは。パルミだけは、努力で真似することができない気がするー」
パルミ「ありりん? もんろー?」
バノ「どうだろうね。たまに似たギャグをやることもあるし、強気になったときの迫力は二人とも共通しているし、魂が近いところ、あるんじゃないか、パルミとカヒは」
カヒ「え、そう? だったらうれしいな」
パルミ「え、ええええー、カヒっち、ほんとにあたしでいいの? なんか、うれしくてあたしは今日を第二の誕生日にしたいくらいだよ、おろーん」
アスミチ「12月8日でいいの? これって1941年の……」
ウイン「ほらほらアスミチ、そこは言わなくていいでしょ」
バノ「そうだね。アスミチ、お口にチャックだ」
カヒ「お口にチャック? どういう意味?」
バノ「おっとまた死語が出たな、死語が、死語の世界からきたぞー、ろくまーい、ななまーい、こまい(古米)、ここまーい(古古米)、こここまーい(古古古米)」
トキト「四年前の米になっちまった」
アスミチ「チャックは日本語の
パルミ「あたし知ってるー、ファスナーっしょ」
バノ「当たりだ、パルミ」
カヒ「やっぱり、いいな。わたしも、今は得意じゃないけど、本を読むね。そしてバノ、ウイン、アスミチみたいになる。パルミの魂を持ったまま、その力を、身につけるぞー!」
トキト「すげえ欲張ってきたな、カヒ。あと、俺の力は?」
カヒ「トキトの力は、体育をがんばるぞー。あともしかしたら金属棒でトキトと試合をして打ち負かすぞー」
トキト「なんの、受けて立つ。拙者の一太刀を受けきれるかな?」
カヒ「さっとよけて、目から魔法ビームを出してジュっと焼いて倒すぞー」
トキト「ぐわあああああ、脳髄を焼かれたー!」
アスミチ「トキトの力を身につけずに倒しちゃったよ」
(つづく)
(ノル「ちなみにアスミチちゃんが言おうとしていたのは日本がハワイの真珠湾攻撃をした日のことなのよね。太平洋戦争が始まった日ね」
トキト「メタ空間内でもなんでもありだな、ノルさん」
ノル「だってだって、ノルだもの」
トキト「あいかわらず意味わかんねえええ」
ノル「ほらほら、トキトちゃんはもとの空間に帰って、ぐいぐいっと」)
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