第48話 人間「きばのこ・はのこ」って?

パルミ「いよいよ話題になるんだにゃー。今回のお題は人間『きばのこ・はのこ』って? つかさ、あたしらバノっちの本名すら知らないじゃん。ネタバレなしでどこまで言えるん?」

バノ「困ったね。私も思い出していないことは言えないよ」

アスミチ「じつは今回はぼくが、マスター(作者)のメモを見る権利を与えられました」

トキト「おお、やるじゃんアスミチ。バノの謎ってなんだ?」

ウイン「トキト、念のため言っておくけど、デリカシー、気をつけてね」

カヒ「そうだよトキト」

トキト「ぐわっ、女子からの圧力がすげええ。俺、反省したから」

パルミ「あのあとアスっちに自慢したりしなかったよね、トキトっち。俺、バノの裸を見たんだぜー、うらやましいだろー、みたいに」

アスミチ「ない、ないよ!」

バノ「パルミ、被害を拡大しないで! トキトが思い出しちゃうだろ」

トキト「大丈夫。俺はもう記憶を封印した」

ハートタマ「もいっかい、異世界渡りをすれば、その記憶が消えるんじゃねえか? キョーダイ」

ドン「ダメだよ、ハートタマ。記憶はだいじにしてほしい。トキトお兄ちゃんも思い出さないって約束してくれてるし」

トキト「おう、任せとけ。たぶんそのうち自然に忘れるだろ、バノのは……」

バノ「だから言うなって言ってるだろーっ!!」

パルミ「あぢゃー、ごめん、バノっち、トキトっち。今のはあたしが煽りすぎた」

ウイン「うん。パルミも反省して偉い。で、バノちゃんの記憶がない状態で、なにかあるかな?」

アスミチ「ほんとは山ほどあったらしいよ。前はね」

カヒ「前はあった? でも今はもうないってこと?」

アスミチ「そうだね、なぜなら」

ウイン「あ、あーっ、そうか、わかった、芝桜ウイン、わかったであります」

パルミ「ウインちゃんがわかるってことはあたしたちもわかるはず……あー、そゆことね」

トキト「バノの記憶のあるのってバニアアースに渡ってきてからだろ?」

カヒ「あ、そうだ。そうなんだね」

ドン「ボクもわかったよ。バノお姉ちゃんのお話って、『本王子』になって五万文字くらいにぎゅっと縮まって書かれたんでしょ」

トキト「五万文字は、俺には長いよ、ドン」

ウイン「え、そう? すぐ読めたよ」

アスミチ「だよね」

カヒ「二人とくらべちゃいけません。わたしは、がんばって読んだよ」

パルミ「過去の偽名はチュリリンだとか、もうわかってるもんね」

バノ「チュリタームだけど……」

パルミ「チュリターム? それって……チュリリンのことかーっ!」

トキト「逆だろパルミ。チュリリンの本名がチュリタームだぜ」

アスミチ「本名でもないからね。でまあ、そういうわけで、このバンジー・ノンビリー・ジュークボックスの中では収まらないほどの情報がもう書かれちゃったんだってさ」

バノ「みんなに誤解されているようだけど、私からいいかい?」

ウイン「え、なんだろう。どうぞ、バノちゃん」

バノ「記憶がいっさいないというわけじゃないよ。お菓子の名前も覚えていたし、わかることもあるんだ」

カヒ「えっ、それじゃ、それ知りたいよ……」

バノ「いいけど、あまり量もないよ。本名もわからないし自分のことはほとんど思い出せないからね。チュリリンのことかーっていうパルミの台詞が有名漫画っぽいことはわかるけど」

パルミ「にゃっ、わかってもらえてたのん」

バノ「個人情報にかかわることほど、ぼやけてしまっているね。ウインの脚やカヒの髪のように、肉体に影響が出るのと似ているといえば似ている。家族……はいたようだけど、うっすらと覚えているのは父くらいかな。母、きょうだい、いたかもしれないが、手がかりもない」

ウイン「異世界渡りの影響だから、治療するっていうわけにもいかないんだよね。私は脚に出た影響だったから魔法で補助してもらえたけど」

トキト「でもわかってることもあるんだろ? 俺たちが聞いておけば、もし記憶がもっと薄れることがあったとしても、教えられるぜ」

アスミチ「そうだよね。ぼくがあずかったメモでも、父親とのエピソードを何度か話すことがある、となっているよ」

カヒ「二人暮らしだったのかな、バノとお父さん……」

バノ「それもわからないね。ただ、そうだね、父のことをかすかに覚えているのは、おそらく強烈な茶目っ気のある人だったからかもしれない」

パルミ「たしかバノっちのお父さんが東ヨーロッパとかの出身なんっしょ? やっぱり金髪の人だったん?」

バノ「容姿はあんまり……けど、まあ私の髪の毛や眼の色は父親由来だろうから、そうだったかもね」

ウイン「それで、お茶目さんだったっていうのは? 聞きたい。ね、バノちゃん、お話、して?」

バノ「物語の本編とはかかわりないことばっかりだよ? 仕事から帰宅してこっそり私に気づかれないように家で隠れていたとか……」

アスミチ「あはは、それほんとにお茶目な大人だね」

カヒ「大人でもかくれんぼするんだね」

パルミ「いやー、カヒっち、大人はかくれんぼ、しないんじゃね?」

トキト「したことはねーけど、うちのじいちゃんなら、一緒にかくれんぼで遊んでくれそうだけどな」

バノ「トキジロウさんといったね、そのおじいさまも、楽しそうな人だ」

トキト「そーだぜ」

パルミ「話がそれてっちゃいそうじゃん。バノっちのパパっちのエピっちを話してほしいっち」

ウイン「むりやり『ち』をつけなくていいんだよ、パルミ」

バノ「おもしろいからいいけどねっち。遺伝だろうけど、きばのこ・はのこが好きだったっちよ」

パルミ「ひゃあ、真似されると恥ずかしいっちから、やめてっち、バノっち」

バノ「それで思い出した。昔の流行語、とっくに死語になった言葉とか教えてくれたっけ」

アスミチ「死語? へえ、どんなのがあるんだろ」

バノ「今のパルミとの会話で思い出したのは『エッチ、スケッチ、ワンタッチ』というやつだな」

トキト「まったく意味がわかんねえ」

ウイン「はーい、芝桜ウインは知ってます。女子が、男子なんかにちょっと文句を言いたいときに使うんだよ。スカートがひるがえっているところをじろじろ見られたりしたときとかさ」

パルミ「いやーん、えっち、すけべっち、トキトっちー!」

トキト「俺の名前なんで入れたの!?」

バノ「トキトの名前が入っている理由は言わなくていいからね! あ、あと流行語の死語だと、諭吉算とか、太子算とか!」

カヒ「計算のしかた? 技っぽいね。たいしざん! ドカーン!」

パルミ「カヒっち、意外にアクション好きっぽいんよねー。本編でもガシャーンとか言ってあたしを悶絶させる攻撃を繰り出してきてたしさ」

アスミチ「はい、諭吉算と太子算、わかる気がするよ。言ってもいいでしょ?」

ウイン「いいんじゃない? ほかに言いたい子、いる? いないっぽいよ。どうぞ、アスミチ」

アスミチ「ありがとう。ウイン。諭吉は、福沢諭吉。太子は聖徳太子だよね」

パルミ「それはあたしも知ってる。世界三大ゆきちの一人が福沢諭吉」

トキト「のこり二人のゆきちが気になるぜ……」

パルミ「のこりは、ただいま募集中でーす。全国のゆきちくん。本殿パルミまで連絡してくれたまえ、今なら空席、アリマス」

バノ「アスミチ、諭吉算と太子算の話を進めていいよ」

アスミチ「うん。一万円札の肖像に使われた人名で、そういう言い方をすることがあるんだよね」

トキト「このタブレット、渋沢栄一が十人分だ、とかいう言い方だよな」

バノ「世界的には、ワックワクドナルドのビッグワック算が有名なところだね」

ウイン「それちょっと小耳に挟んだことあるかも」

パルミ「ウインちゃん、情報をはさみすぎて、小耳がジャンボになってるぼ!」

ドン「ねえ、お兄ちゃん、お姉ちゃんたち、今出てきた人の名前は、みんなが思い浮かべたから顔がなんとなくわかったけど、ビッグワックって、これなになの?」

カヒ「映像だけだと食べ物だってわかりにくいんだね。あのね、地球のいろんなところにお店を出しているワックワクドナルドっていうハンバーガーショップの、人気メニューなの」

パルミ「あー、思い出したらビッグワック食べたくなってきたわー。今だけダブルビッグワック食べられそうなくらいお腹ぐーぐーのすけー」

ドン「あ、みんなが味を想像したから、なんとなく伝わってきたよ。ハンバーガーっていうんだねー」

バノ「アメリカ大統領や、大富豪も気に入ってよく食べると言われている、ハンバーガーだ。うちの父親もたまに食べていたので、私もつきあったものだよ」

ウイン「やった。またひとつバノちゃんパパの情報だね」

バノ「テフバーガーも好きだったし、バーガーロードの縦読み広告も気に入ってたって話もする?」

ウイン「あはは、そういうのも聞きたいよ!」


 ・ ・ ・


バノ「……というところで、まったく本編で役に立つこともないことばかり、覚えているってことだね。さすがに話し疲れたよ」

パルミ「ほんじゃ、バノっちの寝かしつけっていったら……えっとー、本編の進行を先取りしちゃうことなるけど、ウインちゃんってことでいい?」

ウイン「べつにいいけど? バノちゃん、ふらふらだしね。少し横になろう? ごめんね、無理させちゃって」

バノ「ちっとも無理じゃないさ。もし記憶の喪失が進んだら、私に話してくれるんだろ……?」

トキト「かならず、話すぜ」

バノ「よかった……じゃあ、休ませてもらおうかな……ぎゃっ」

カヒ「バノ、つまずいた」

ウイン「おっと。はい、バノちゃんは受け止めました。こういうとき、年齢はよっつ離れてるけど、体のサイズが同じくらいだから助かるよ」

パルミ「だねだね」

トキト「俺とアスミチは男だから、ウインが適任だもんな」

バノ「(すやあ)」

パルミ「立ったままもう寝てる!?」

カヒ「わりと、ウインが寄り添うと、休まるみたいだよ。バノ、いつも遅くまで本を読んだり書き物をしてたりするから、慢性的に寝不足なのかもしれないよ」

アスミチ「ありそうだ……」

ウイン「じゃ、しばらくバノちゃんを寝かせて様子を見て、それから戻りまーす」


(つづく)



※「今だけダブビ」挿絵 https://kakuyomu.jp/users/cogitatio/news/16818093089957841877

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