第46話 「ドンキー・タンディリー」ってなに?

トキト「お題は、ドンキー・タンディリーってなに? らしいぜ」

ドン「なにって言われてもボク自分がどうやって作られたかも忘れて……あ、名前のことかなあ? ボクの名前はウインお姉ちゃんにつけてもらったんだよ」

カヒ「そうだったよね。わたし、ウインが叫ぶ声でドンキー・タンディリーって知ったんだ」

トキト「なんだっけ、イマジンフレンドリー……イメージフランダース……」

パルミ「もう、イマジナリーフレンドっしょ、トキトっち」

トキト「おおそれだ! パルミに教えられるなんてなー」


ウイン「私も自分の中での名前の由来はもう覚えていないけど、作品名としてのドンキー・タンディリーの記録は残っているみたいだよ」

バノ「メタ空間だからできる発言だな。その記録を開陳したほうがいいかな?」

アスミチ「うん、ぜひ知りたいよ。ドンキー・タンディリーってどういう意味なんだろう?」


バノ「マスター(作者)も初期の頃の設定だから記憶があいまいだったらしいが、きちんと文字記録が残っていた」

アスミチ「文字で残すって大事なんだね。ぼくもノートにこの会話をメモしておくよ」

バノ「いい心がけだね」

カヒ「それで、ドンキー・タンディリーの意味って、なになの?」

バノ「ドンキーはロバだが、そこからのろまなとか、にぶいとかいう意味を帯びて使われることがあるらしい」

トキト「ポンコツロボっていうタイトルに合ってるよな」

バノ「問題はタンディリーだが、直接、そういう言葉はないようだ」

パルミ「ないのん? ウインちゃんの完全オリジナル創作ストーリーとか? やっぱりウインちゃんはタンドリーチキンが大好物だったとか?」

ウイン「私が思いつく前の、作品タイトルの話だからね、パルミ」

バノ「記録で今、つまびらかになるよ。なんと作品の初期構想メモに、


“トムディックハリーをくっつけてトムディカリーとかタンディリーとして、「ドンキー・トムディカリー」「ドンキー・タンディリー」という愛称でもいいかと考える。”


 と書かれている」

パルミ「ぎゃあ、作者がしゃべった!」

ウイン「まあ……この空間ならしゃべってもいいんじゃない?」

バノ「直接、会話にくわわることはしない方針らしいよ。だから不肖このきばのこ・はのこが代わりにしゃべっておこう」

アスミチ「うん、そうして。バノから説明されるほうが頭に入れやすいよ。で、さ、トムディックハリーが縮まってタンディリーは、わかる。その元は?」

カヒ「アスミチ、すごい速さでメモしてるね。うん、トム、ディック、ハリーっていうのは人名っぽい……」

バノ「まさにそうだよ。どこにでもいる名前をつなげて、『誰でもかれでも』という意味になる」

パルミ「あたし知ってる。日本語でも『みーちゃんはーちゃん』って言い方あるっしょ?」

アスミチ「あ、それ『若いにわかファンになりやすい人』という意味で、悪口っていうよりは自虐的じぎゃくてきに自分を言うことが多い言葉だよね」

バノ「今は、そうかもね。ま、あまりいい意味で使わないから控えめにしたほうがいいかもだ」

ウイン「略してミーハーって言うよね。自分のことに使うのも、ダメかな? バノちゃんはそれも反対なの?」

バノ「そうだね。だってたとえばまだ若い人が、『自分なんて年寄りだから無価値だ』って言ったら、まわりの同じくらいの年齢の人、年上の人はとても嫌な気がするかもしれないだろ? 自虐じぎゃくは巻き込みが怖いんだ」

パルミ「なーる。バノっちはやっぱいいこと言うー。あたし、還暦かんれきになってもあたしは若いって言うようにする!」

カヒ「うん。還暦の人は年寄りって言ってもいい気がするけど……そうだね、わたしも気をつける」

アスミチ「巻き込みか……年齢だと、ぼくがみんなより年下だから、って言うとカヒを巻き込むかもしれないわけだよね」

トキト「そういうことだよな。悪気がないだけに、被害をうけても言いにくいよな、それって」

アスミチ「ぼく、カヒに嫌な思いをさせてたかな……」

カヒ「ううん。ないよ。わたしこそ、そういうことあったかもしれない」

バノ「まあまあ、私と出会ってから限定だが、君たち全員、そこまで問題ある発言はないと思うよ。言い過ぎの事故みたいなのは避けられないが、誰かしらがフォローしている関係に見える」

ウイン「うん。バノちゃんは少し外から見られる立場だからね、そう言ってもらえると助かる。これからもなにかあったら指摘してほしいな」

バノ「心がけよう。でもまあ、お互いに寛容かんようにいこう。よほどじゃなければ、謙遜けんそんはまあまあ美徳だ」

トキト「あ、俺も思いだした」

パルミ「なに? なにを思い出したん、トキトっち」

トキト「誰でもかれでも、って言ったら猫も杓子しゃくしも、月もすっぽんも、って感じがする」

パルミ「月とスッポンは違うっしょ!」

アスミチ「一見したところ丸い形だけどぜんぜん違う、っていう意味だね、月とスッポンは」

トキト「お、そか。フォローありがとな」

カヒ「猫も杓子もは、合ってるよね」

バノ「合ってる。あくまで慣用表現だから、伝わればいい。今、自作してみようか。『太郎も花子も』春が好き。『ご隠居も熊さんもはっつぁんも』夏は暑い。『ヤジさんもキタさんも』冬に重ね着しがち」

ウイン「私は、三つとも誰でもかれでも、っていう意味に聞こえたかな」

パルミ「太郎と花子はいいけど、熊さんはっつぁんってなに? はちみつ好きな獣と飼い主?」

ウイン「はちみつ好きなクマはいるけど、持ち主はクリストファーかな……」

パルミ「ウインちゃん、クリストファーもあたし、わかんない」

アスミチ「ヤジさん、キタさんは、江戸時代の物語『東海道中とうかいどうちゅう膝栗毛ひざくりげ』かな?」

バノ「そうだよ。ウインとアスミチ、当たり。でもやっぱり即席に作っても通じないか」

カヒ「そうだね、自分で慣用句を作っても太郎も花子もわかる、っていうわけじゃないんだね」

トキト「おっ、カヒ、さっそく使ってんじゃん。うまいな」

カヒ「えへへ。せっかくバノが作ってくれたから、使ってみました」

パルミ「あり? ありありありありあり、ありがとう?」

トキト「おわ、突然パルミ、なんで俺にお礼を言ってきたんだ」

パルミ「お礼じゃないし、トキトっちに言ったんでもないよ!」

ウイン「どうしたの、パルミ?」

パルミ「うん、えっとさ、誰でもかれでも、っていう言葉が元になっているんならさ、ドンキー・タンディリーっていう名前、やっぱり正体不明なんねーって気づいて」

ドン「そ、そうだね。ボクの正体とかって、わからないね」

アスミチ「いやドンの正体は関係なくウインがつけたイマジナリーフレンドの名前だから……あ、そっか、心の中の友だちだから」

ウイン「そうだったかも。私も、心にいる物語の誰でかれでも、友だちとして話し相手になってほしかったのかも」

バノ「なるほど、それでトムディックハリー、トムディカリー、タンディリーと変化した名前になったのだな」

ドン「そうだったんだね。心の友だちの名前をボクにくれて、ありがとう、ウインお姉ちゃん」

ウイン「なんのなんの、いいんだよリベ……ドンキー・タンディリー」

バノ「なんか今、へんな言い間違いをしなかったかい、ウイン」

ウイン「え、言い間違いっていうか、かんだ? ごめんね、ドン」


(つづく)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る