第42話 「カロカツクーウ」ってなに?

バノ「好きな話題で話していいメタ空間を作ったと聞いたけど?」

ウイン「そうみたい。本編を離れてなんでも話していいエッセイなんだって」

トキト「んじゃ、ヘクトアダーの倒し方がいいな、俺」

パルミ「ダメっしょ、本編のネタバレはできないっしょ、これだから男子は……」

カヒ「バンジー・ノンビリーって、ちょっとだけドンキー・タンディリーに似てるね」

バノ「そうかもね。ドンキー・タンディリーの名前の由来については第2話で」

アスミチ「それじゃ、第1話の今日は、なんの話になるんだろう? お題は『カロカツクーウ』ってなに? みたい」

トキト「あ、それ。変な名前だよな。ツクールとかスクールならわかるけどツクーウってさ」

ウイン「そうだね。言いにくいよね、カロカツクーウ」

アスミチ「エルフの秘宝だよね、カロカツクーウ。あとドワーフはダロダツデーニを持っているんだった」

カヒ「ダロダツデーニのほうは、そこまで言いにくくないね」

トキト「これ、なんか意味あんの? バノの紫革紙面に書いてあるわけ?」

バノ「この『すべてが書かれた本』である紫革紙面に、ないものはない! と言いたいところだが、私にとっての『すべて』の指針というだけで、世界のすべてではないようだよ」

パルミ「ひゃあ、それじゃ、いきなり話がおしまいじゃん! カロカツクーウってなに、わからーん、終了ー」

ウイン「パルミ、さすがにそれはないでしょ」

ハートタマ「メタ空間なんだろ、作者から情報引っ張ってくればいいんだぜ」

ドン「そんなのでいいの? 作者ありなら、謎もぜんぶ……ボクのこととかも……」

バノ「ハートタマ、ドン、君たちは自分自身の謎も多いから、気持ちはわかる。けれどここでは第42話までの進行の範囲にしておきたい」

ウイン「うん、そうだよね。私たちが知らないことまで話すのはおかしいし」

アスミチ「うーーーーーーー」

カヒ「うわっ、アスミチがすごく知りたそう。湯気が出るほど顔をしかめてる。トキト、なだめて」

トキト「アスミチ、いい子だ、どうどうどう、晴れたら金の鈴あげよう」

アスミチ「ぼ、ぼくはてるてる坊主じゃなーーーい!」

トキト「じゃあ、でんでん太鼓に笙の笛……」

パルミ「トキトっち、アスっちを寝かせようとしてどーすんの!」


バノ「さて、カロカツクーウとダロダツデーニだけど……」

パルミ「うんにゃ? アスっちもウインちゃんも、なにも言わなそうにゃ?」

カヒ「二人が思いつかないなんて珍しい……」

トキト「生き物とか物語とかの名前じゃないってことか」

アスミチ「知らない……カルカロドンなら古代の巨大サメだけど、だいぶ違うし」

ウイン「物語にもないなあ。地球由来の言葉じゃなくて、近世界独自の言葉なの? バノちゃん、解説、お願いっ」

バノ「地球、それも日本由来の言葉だね。小学生ではなかなか知らないかもしれないが」

パルミ「ってことは中学で習う内容なのん? 高校入試で役立つとか?」

バノ「そうだね、パルミ。大いに役立つだろう。中学生が百人いれば九十人は苦手とする『国文法』にかかわる言葉だから」

トキト「コクブンポー」

カヒ「国分寺みたい。わたし、国分寺なら遺跡があるって聞いたことがある……けど、ちがうんだよね?」

バノ「国分寺は社会科の歴史分野で学習するね。カヒは四年生なのに知っているだけでもすばらしいことだよ。国文法とは、日本語の使い方のルールのこと。それを学ぶときに……」

ウイン「日本語なのに、知らないのはちょっと悔しいな」

バノ「正式な用語じゃないから、悔しがることはないさ。以下、見てくれるかい、みんな」


 おいしい


 おいしかろう

 おいしかった・おいしくなる・おいしゅうございます

 おいしい

 おいしいとき・おいしいの

 おいしければ


バノ「わかるかな? おいしいという言葉は形容詞なんだけど、このように形が変化する」

パルミ「あ、あああ、あったーーーーーっ!」

アスミチ「うん、パルミ、あったよー!!」

パルミ「アスっちもわかったんだにぇー!」

カヒ「珍しい。パルミとアスミチが手をとりあって躍り上がってる」

トキト「あー……とちゅうに入ってるな、たしかに」

ウイン「これ、私、なんか見覚えあるよ。なにかの本に書いてあった、形容詞の活用……だったかな」

バノ「ウイン、正解だよ。中学で習う形容詞の活用であってる。おいしいという形容詞は、『おいしかろ(う)』という形になれる。これを未然形と呼ぶ」

アスミチ「中学で習うんだね。ねえ、なんで『う』を取って『おいしかろ』なの?」

バノ「『う』は、べつの言葉なんだよ。甲野アスミチという名前に『は、ごはんを食べた』をつけてもいいように、べつの言葉がいろいろ続くことってあるだろう?」

カヒ「おいしかろ、で切るのってちょっとおもしろいね」

パルミ「じゃあさ、バノっち。そのあとのも『おいしかっ(た)』『おいしく(なる)』『おいしゅう(ございます)』ってなるのん?」

ウイン「なる、なるよ、パルミ。だって、カロのつぎ、カツ、ク、ウって出てくるもの」

トキト「おいしゅうのところは『しゅう』だけど……」

ウイン「トキト、昔は『おいしう』って書いたんだよ。でも口に出してみてよ」

トキト「おいしゅう……あれ、おいしゅう……勝手に『しゅう』になる感じか?」

アスミチ「ゆーっくり言えば『お・い・し・う』って言えるけど続けたら『おいしゅう』だよね。うん」

バノ「ってわけなんだ。と紫革紙面が語っている。エルフの秘宝は、この形容詞の活用から取った名前なのだと!」

パルミ「いや、そこまでは書いてないっしょ。作者のメモからっしょ」

バノ「えへへ、ばれた?」

カヒ「ねえ、バノ。ダロダツデーニのほうは? 形容詞とはまた違うの?」

バノ「ああ、そっちは形容動詞っていうんだ。『静かだ』を同じようにしてみようか……」


 ・ ・ ・


ウイン「ふむふむ……」

アスミチ「なるほどね……」

トキト「俺、なんだかねむく……なって……ふああ」

パルミ「だめっしょ……トキトっち……来年中学……ふにゃあああ」

カヒ「そっかー、形容動詞、っていうんだね」


(つづく)


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