第17話:オソガルの結婚相手について
稽古後の子どもたちの集会は賑やかだ。そこにいるものを見渡せば大小さまざまな女たちが並んでいる。
下は7歳。上は14歳の少女たち。ソンガンの里において、姉妹同然に過ごしてきている。その中でも最も年長のオソガルの姉が結婚したのだから仕方がない。「次はあたしの番」であると気がはやるのも無理ないことだ。
話題は
ソンガンの里には、花嫁が着ることを許される婚礼衣装がある。
赤の染料によって、染められた絹仕立ての衣装である。赤みが強ければ強いほどよいともされる。鮮やかな色味のそれを纏うのは若さの証だ。鮮やかな赤は、鮮血による返り血を表現する。
武神ハルドウが地を平定するにあたり、返り血を拭う暇もなく戦いに身を投じていた。
この逸話から、ソンガンの里において赤は大きな意味を持つ。
「やはり、姉さん達は結婚したいと思ったりするの?」
オソガルにとって、実姉は一人である。しかし、ソンガンの里で姉貴分のことはだいたい姉さんと呼ぶのが習慣でもある。
最近、無口なことが多い弟分の突然の発言に、姉さんたちは驚いた様子。しかし、その驚きも一瞬で。じわじわと広がるように、笑みが姉さん達に浮かぶ。妹分は何が面白いのかわかっていないようだ。それがオソガルには多少安心する。
口火を切ったのは、もっとも年嵩の姉貴分だ。
「当たり前じゃない! あんたの姉さんが、婿を取りに旅に出たのは釣り合う男がいなかったからだよ。立派に男を落として、里に戻った姉さんは立派だ! だけどねぇ。あたし達はちょっと別だな」
「別というと?」
オソガルはいつも訊ねることに
「ええぇ。それあたし達に言わせる? やらしい子だぁ。あたし達、女は多いけど。男はあんたしかいないのよ。となれば、あんたはあたし達の誰かと結婚することになるんだ。選ばれなかった女は婿を探しに、旅に出る必要があるんだよ。考えたこと無かったのか?」
「無かった」
姉貴分の説明は明快で、難しい話が苦手なオソガルでも十分に理解できた。
「お気楽なもんね。だけど、まあ。あんたはまだ子どもだし。そんなもんかも。ちなみに訊くけど、あたし達の誰と結婚したい?」
それとなく。本当にただの話題のはしり。として訊ねた風を装う姉貴分。女の子達はオソガルの答えに興味津々である。
これが彼女たちの笑顔の理由だ。
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