第15話:ヴァジナの説得
乳のデカい女が情の厚い女。こんな頭のおかしな話を吹き込み続けたいい大人がいる。それは、ヴァジナである。吹き込まれた子どもはオソガルだ。天下無敵の師匠。そして、その弟子であるオソガルにとって師匠の言葉は絶対だ。その彼女がそう説くのだから、間違いない。
「ほう! よくわかっているじゃないか。ところで訊こう。この里において、わしより乳のデカい女はおるか?」
折に触れて、ヴァジナの乳のデカさについては言及していたが。ついに、本作の真打ち。ヒロインから言及があったので。触れねばなるまい。むしろ触れぬのが失礼というもの。
ヴァジナという女性を表現する時、それは多くの男が振り返る背丈と乳房である。
デカいことは強い。
ヴァジナが戦場武術の使い手であり、武神の
ヴァジナは里の男たちの誰よりも背が高く、相応に筋肉がついていた。
縮尺がそのまま大きくなれば、必然と乳もデカい。
ソンガンの里の女達のそれは、小さなお椀程度のものがせいぜいだった。
しかし、身の丈の大きさに比例したように、西瓜のような乳房を持ったヴァジナはそれを自慢としていた。
「……おりません」
ヴァジナの乳のデカさを超える女はいない。となれば、ヴァジナ以上の良い女はいない。そういう理屈だ。大人であれば、その理屈が立たないことに気づくのだが、オソガルは子どもであるから気づかない。というか、こんなことで言いくるめられるのだ。それは子ども扱いされても仕方ない。なにを隠そう、彼は考えるのが苦手なのだ。
ヴァジナの案内に神妙な表情をするオソガル。それをみたヴァジナはいくらか溜飲を下げたのか。正対するオソガルを再度膝におろした。
ヴァジナの乳はまるで背もたれのように、オソガルを包んでいる。
「……ふん。これで、わかっただろう? お前の妻にふさわしいのは乳のデカい情の厚い女である。お前はまだ若い。これからまだ身体は大きくなる。励めば、お前はわしを倒せるようになるのだから、もうすこし辛抱だ」
ヴァジナの言葉に偽りはない。亜神の稽古は凄まじく、五年の月日は少年を限りなく強くした。ただ、強さに少年の自信が追いついていないだけだ。
「師匠、質問しても?」
「許す」
「師匠はお強い。誰かに負けたことはありますか?」
「ないからここにいる。無敗だ。無敗ゆえに武神の加護も受けた。いつか、わしを倒せる男か女が現れるのを心待ちにしている。手が止まっているぞ。飯を食え、身体を作れ」
オソガルは師匠の手によって、食事を運ばれる。
魚を押し込み、スープを流し込む。甘々に甘やかされている。
オソガルが咀嚼と嚥下を繰り返し。
師匠の手が空いたころに再度発言した。
「師匠! 僕は伴侶を探しに旅に出ます!」
「だめ!」
お許しは出なかった。
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