第13話:ヴァジナの返事
弟子からの突然の求婚。
ヴァジナには数瞬がひどく長く感じる。しかし、何千と脳内で繰り返した展開だ。
ヴァジナはすらすらと答えた。
「あい。分かった! お前の求婚を受けよう! 十歳にして、妻を娶ろうとは
ヴァジナはオソガルからの求婚の申し出に、狂喜乱舞といった有り様だ。
弟子の前で師匠としての威厳を保つことに必死である。必死であるが、震える声は隠せるものではない。
膝の上に座るオソガルを喜びの余りにもみくちゃにしている。
もしも、これが並の男であれば、
鍛錬に鍛錬を重ねたオソガルであればこそ耐えられるものだ。
(お師匠の様子がおかしい……?)
オソガルとしては不思議でいっぱいだった。しかし、このお師匠の喜びようを見るに。オソガルの考えはあながち間違いがないのだ。と自信を更に深めた。
しかし、師匠の様子を伺おうと、首を背けるとそれは拒絶された。
「上を向いてはならん。今は向いてはならんぞ!」
師匠にあるまじき顔つきを見せまいと、ヴァジナは必死だった。
なにかしら。食い違っているようにも思う。思うので、オソガルは考えるのは苦手だが。考えた。そして、気づく。オソガルは言葉が巧みではない。
「……お師匠! 勘違いが起きてます。言葉が足りませんでした! 姉は結婚してなお強くなりました! となれば、僕も結婚相手を探しに行きたいんです。許可をください!」
どういうわけか、師匠はオソガルに求婚されたと勘違いしている。
強くなるため、ソンガンの大人たちに子ども扱いされないために結婚をしようというのに、このまま鍛錬を励めという。オソガルの考えとは本末が転倒していることに気づいた。
オソガルはこの申し出をしながら、師匠の声と体温が急激に下がっていくのを感じ取る。乳に挟まれているということは、彼女の胸に耳を当てているということ。オソガルの頭を叩くような彼女の鼓動がいやに静かになっていくことに気づいた。
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