第9話:ヴァジナの愛の巣
新婚夫婦には新居が必要だ。しかし、そう簡単に用意できるものでもない。
それはソンガンという里が、非常に特殊な集落であることが原因だ。
家を建てようにも大きなものはちと工面が難しい。
自然と小ぶりな小屋となるのが常だ。
新しい家族の為に一棟、用意するのもあれこれと考える必要があったりする。
ソンガンには
独居の
となれば、以前まで住んでいた里親の元で過ごすのが、道理であるが。それをヴァジナが強く拒否した。
「新婚夫婦は二人で暮らすものだ。わしたちが邪魔してもならん。急いで小屋を作らせる。婿殿には多少窮屈だろうが。我慢してもらえ」
と言い
小屋が建つまでの間は、簡素な天幕で過ごさせた。夫婦は今まで旅が当たり前であったのだから、さしたる苦労もなかった。
それと並行して、宴会の準備までさせたというのだから、なかなかのこと。
宴会を終えて、新郎新婦は初夜としけこむだろう。そもそも、あの二人が、そんな貞操のしきたりを守っているのかも怪しい。怪しいが、それは些末なことだ。ヴァジナにとって大事なのは、オソガルと二人きりということだった。
ヴァジナは当たり前のようにこぶりな小屋に住んでいる。
ヴァジナは里に住んで長いが、独り身である。多くの者たちが、ヴァジナに熱烈な求婚を重ねてきた。男も女もである。
「わしに勝てる者なら、いくらでも捧げよう」
と
ヴァジナがオソガルにご
小屋は一人用である。
オソガルたちを引き取った時に、もっと大きな家に越してはいかがか? と勧める意見もあった。
しかし、ヴァジナはこれまたやましい人間である。男を落とすのであれば、狭い小屋のほうが都合が良い。ということで、そのままとした。
ここはヴァジナの孤独の巣であったが、オソガルが来てからは愛の巣と変じた。オソガルの姉はおまけである。
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