第8話:無垢なオソガルとよこしまなヴァジナ

 

 ここ最近は、ヴァジナの願う形におさまりつつあった。

 

 男を求めて、オソガルの姉がソンガンを旅立ったからだ。


 朝な夕なと、オソガルと二人っきり。

 武術指南として、ソンガンの民への指導のかたわら、特別な稽古をオソガルにつけてやる。

 長年、ヴァジナが望んでいた「男と二人っきりの生活」という夢を達成していた。

 この生活も長く続けばと。願っていた。春が過ぎて、夏になれば、服も薄くなる。二人故にできる距離の縮め方もあったはずだ。

 

 めくるめく日々が始まる。はずだった。


 しかし、この短期間で男を見つけてくるとは……。それはヴァジナにとっても予想外だった。


 戻ってきたものは仕方がない。ソンガンの大人たちをしばきあげて、三日という準備期間で新居を建てさせ、結婚式まで挙げてやったのだ。これ以上に邪魔をされては堪らん。

 

 ヴァジナはむらむらしていたのだ。どこがどうであるのか。とかはようは申せない。それを申し上げると、色々と問題があるからだ。

 とにかく、彼女はムラムラしている。

 しかし、相手がその気でないのに襲ってしまえば、ヴァジナの立場がない。オソガルがその気になるのをじっとりと待つ。それがヴァジナである。

 意気地いくじがあるのかないのか。わからぬが、それがヴァジナである。


「怖かったかですか? ヴァジナ師匠! 僕はもうそんな子どもじゃありません。多少の暗がりを怖がるのはもう辞めました。夜のお手洗いも、最近は一人でいけます」


 声をあげるオソガルのそれは、少々震えていて。ヴァジナの庇護欲を十分に誘った。


「ほう! 立派なものだ。それじゃ、助けにこなくても良かったか?」


 オソガルの勇ましさを前に、ヴァジナからはこんな意地悪いじわるも飛び出る。


「そ、それとこれとは別です。早くお家に帰りましょう。今日はまた強くなるための気づきを得ました! 僕はそれを早く確認しないといけません」


「そうかそうか! オソガルはまだ若いのに、熱心でよろしい! その気付き。あとからゆっくりきかせておくれ」


 オソガルはヴァジナの乳で挟まれるままに、家へと運ばれた。オソガルの腰を、抱きかかえるようにして歩く。オソガルはまるで少女が抱える人形のように、なすがまま。足は地につくことなく、ヴァジナに連行されていった。

 

 西日はとっぷりと落ちていて、薄暮はくぼとなった家路を進んだ。道中、宴会の余り物を包んで持ち帰った。オソガルはまだ食べていないだろうと思ってのことだった。ヴァジナも優しい所はあるのだ。

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