第6話:ヴァジナ乱心!
大人たちの追求を前に、ヴァジナはゆっくりと目を閉じる。その心にやましい所があるか。問われた時に浮かぶのは、オソガルのことだ。姉のことは眼中になかった。
重ねるが。
オソガルは少女のような愛らしさを持つ少年である。
ヴァジナはその愛らしさを確認するために、武術の鍛錬も早すぎるというのに、何度も何度も通い詰めた。目つきは幼児を見るそれではなく、男を見る目である。
大人たちはヴァジナのその態度に不穏さも覚えていたが、彼女の望みを知っているから
大体、この説話に登場する人物の多くは迷惑だ。
ヴァジナも迷惑な輩である。
大人達は幼い頃から、ヴァジナの指導を受けて、弓術、馬術、槍術、剣術、水泳術、捕手術、柔術等「戦働き」に必要とされるもの全般を叩き込まれている。
故にヴァジナの願いを知っていた。
「オソガルは武の素質がある。わしが言うのだから間違いない。今から鍛えればわしを倒せる男になる。あと、
ヴァジナの凄みのある笑顔を前に男たちは目を伏せた。
彼女はやましい考えでいっぱいだった。
しかし、軟弱な男たちのせいで、伴侶を持てぬ彼女にこれ以上何も言えなかった。
「本来であれば、我らが面倒を見るべき子ども達だが、ヴァジナにお任せいたします」
こうして、オソガル姉弟はヴァジナの預かりとなった。
後はご想像の通り。
ヴァジナに鍛えられた姉は里一番の女武者となり、夫となる男を求めて旅に出た。
ここにヴァジナが目論んでいた「わし好みの男を育てる」というやましい狙いは達成されようとしている。
※※※
時を巻き戻して、オソガルの話に戻る。
折檻の意味を込めて、蔵に閉じ込められたオソガルを蔵から出してやるのは姉の役目と思われる。しかし、そんなことはなかった。やましい考えでいっぱいのヴァジナがそれを見逃すはずがない。
宴会の喧騒が少しずつ遠のいた頃を見計らって、助け舟を出したはヴァジナである。
「オソガル! ここにおるのか! わかってるよ。わしから隠れることはできないぞ。ほーら見つけた!」
蔵の戸を壊さん勢いで、戸をすべらせるヴァジナ。つっかえ棒など悲しい音を立てて、折れた。
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