第4話:オソガル少年爆誕!

 この物語の本筋(オソガル少年の嫁探しの旅)に姉は大きく関与しない。

 しかし、オソガル少年を語る上で彼女を語らないわけにはいかないので、少々文字を割こう。

 彼にとって姉というのは理不尽な山猫そのもの。

 七つ上の姉は幼い少年のかなう相手ではない。暴力と気まぐれの塊のような存在だ。

 年を超す前。秋の終わりにソンガンは産まれた。


 冬備えの忙しい時期だ。


 オソガルは花も恥じらう愛らしさを備えた少年。

 産まれた時はその愛らしさから、ソンガンの民が彼の愛らしさを確認するために、昼夜問わずに訪問が絶えなかったという。

 なんと迷惑な人々であろうか。しかし、そんな迷惑を起こし、人々を狂わせるほどに愛らしいのがオソガルである。

 

 この愛らしい弟を姉は好ましく思っていた。

 どこに連れ回しても可愛いし、自慢の弟だ。

 姉は弟をよく可愛がった。

 紛れもなく可愛がった。

 しかし。

 その可愛がりが、適切であるかどうか。というのは当人同士の感覚の問題もある。

 姉は良かれと思ってのことではあるが、行き違いがあったのだろう。

 

 それが加速したのは、オソガルが5歳の時だ。二人の両親がぽっくりと逝ってしまった。いくら身体を鍛えるソンガンの民であろうとも、病には勝てない。


 病で両親を亡くした彼にとって、姉は唯一の肉親である。

 

 甘やかされて育ったオソガルはたまらない。姉にベッタリとひっつくのだが、姉もこたえたのか。


「あんたみたいなお荷物がいるだけで、お姉ちゃんは苦労するんだよ! メソメソすんな!」


 臆面もなく言ってのける姉。

 5歳のオソガルはこれに参った。

 姉は姉で、ふにゃふにゃ泣き出す弟を不安に思う。

 こんなに可愛いが、たくましくはない。

 この地で生きるには弟が柔らかすぎる。

 まるで男に見えない少女のような少年。

 伸ばす腕は健康的ではあるが、頼りない。

 小枝のような腕と足。乗っかる頭は桃のようにふくふくした顔。

 12の娘には、先行きが不安だったことであろう。

 可愛さ余って憎さ100倍。

 自分よりも愛らしいのがなおのこと、気に食わん。

 こんなに相性の悪い二人だけで生きていけるわけがない。

 ソンガンの大人たちも、孤児となった二人を把握していた。


 里は豊かで、子は喜ばれる。


 どこも手をあげて引き取ろうとした。

 しかし、すべての希望をなぎ倒して、二人を引き取った者がいる。


 名をヴァジナという。真打ち登場。本作のヒロイン。ソンガンにおいて最も乳がデカい女である。

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