第6話 受け継がれる腐の意思
201X年、待望の第一子が我が家に生まれた。
性別はどちらでも良かった。ただ元気な赤ちゃんとして、生まれてくれれば、それ以上は望まなかった。
長女が生まれて一歳になったころ、実家で親戚を招いて”
”餅踏み”というのは、たぶん九州で行われるお祝いだと思う。
場所によっては、他のお祝いがあると思うが。
うちは福岡だったので、我が子に草鞋を履かせて、餅の上を踏ませるという行為をした。
まだ一歳になったばかりでしたので、ギャン泣き。
しかし、その前夜に事件は起きた。
僕と妻、それに長女は先に実家で一晩、泊まったのだが。
赤ちゃんだった娘がなかなか寝付けないでいたので、妻も眠れずにいた。
その時、姑である僕の母さんが「代わるよ」幼い長女を寝かせるため、しばらくおんぶしてくれた。
少しでも妻が眠れるように。という気遣いだったのだけど。
別にこちらが”望んでいないもの”まで、置いていった。
僕の妻は特別、BLというものに興味も偏見もないのだけど。
たまにうちの母さんは、BLぽいマンガで僕の妻を沼に落とそうと試みている。
ライトなものからハマらせて、段々とハードルを上げて相手の様子を見る。
いつものやり方だ。
この際、疲れた妻は母さんが置いていったBL本に気づかず、眠ってしまった。
僕は眠れなかったので、そのマンガでも読もうと思い、日常系の作品かと思っていたら。
中盤からガッツリ絡みのシーンがあり、僕は飽きれてしまった。
~翌日の朝~
餅踏みを行う前に、親戚などが一気に集まるので、実家のリビングを掃除していた時。
その時、事件は起きた。
長女がハイハイし始めて、間もないころだったので、祖父である父が見てくれていたのだが。
あるものを、長女が手にしてしまった。
昨晩のBL本だ。
可愛い盛りだったので、寡黙だった父も長女にはデレデレだ。
「うわぁ! 絵本かな? なんだろね? 読んでみようか」
もちろん、この時。父は何の本か知らない。
近くで見ていた僕は、一瞬で気がつき、長女から取り上げようとしたが、既に遅かった。
「あうあう……」
読みあげてしまった。
「お、上手上手! もっと読んでごらん!」
愛する孫が初めて声を出したと思い、ビデオ撮影まで始める始末。
父親である僕は、この光景を見るだけで何もできなかった。
「ワンワン、あうあう」
「上手だねぇ! ワンワンの漫画かな? じぃじにも見せてごらん」
そのあとは、地獄だ。
愛する孫が初めて読んだ本はBLだと知り、怒鳴り声を上げる。
当然、その怒りは母に向けられた。
長女からマンガを取り上げると、物凄い力で壁に叩きつけた。
「こんな汚いものを置いておくなっ!」
この時、壁に当たって、するすると落ちてきたBL本を拾う母の姿は。
さすがにかわいそうだと思ってしまった……。
しかし、そんな長女も今ではガッツリ祖母の血を受け継ぎ、次女とBL本にGL本まで読み漁るようになってしまった。
”腐女子のばぁば”の部屋で育ったので、避けることはできなかったようだ。
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