第15話 学園生活と授業風景と、あと部活動の話8
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――……
「え、おじ様来てるの?!」
通学時、合流した女性陣に早朝のことを話したら、一番驚いた反応を示したのがフィーだった。
「おじ様??」
俺が聞き返すと同時に、一斉に視線がフィーへささる。
「うん、イルリスおじ様って家族ぐるみで付き合いのある人でね。
そっかー、イルリスおじ様、来てるんだ。
会えるかな」
フィーはどことなく楽しそうだ。
一方、話を聞いていたオーレリアはなんとも複雑な顔である。
「今朝、来ないなとは思ってたけど。
そんなことがあったんだ」
「あー、まぁ、うん」
聞かせない方がよかっただろうか。
でも、いつまでも話さない訳にはいかないだろうし。
「でも、昨日の今日なのになんか早いような気もするなぁ」
これはエリ姉である。
「捜査局の動きや、カキタ達の寮の二年生が言っていた【気配】のことも気になるけど」
リリアさんが俺とライリーを見ながら、言ってくる。
それもかなり真剣な表情である。
「カキタ、それにライリー。
決闘のことはどうするつもり??」
俺たちは顔を見合わせた。
手袋を投げつける決闘の申し込み方法は、寮の先輩トリオから聞いた申請云々とはまた意味合いが違って来る。
より、真剣で命をかけるものである、と先輩トリオやイルリスさんから説明を受けた。
それこそ、後の人生に影響を及ぼしかねないほど、神聖な儀式だと考えたらいいらしい。
ただ、現代には蘇生魔法があるので、この勝負事で命を文字通りかけるのは難しい。
そのため現代では後の人生に多大な影響が残ることになるとか。
端的に言うと、こちらの界隈では就職に影響するらしい。
俺の場合は最悪姉ちゃんの店で働かせてもらいつつ、調理師とかパティシエの資格を取って食っていく道がある。
なんなら農業に専念するという手もある。
少なくとも、決闘から逃げたとかで食いっぱぐれた話は聞いたことがなかった。
ぶっちゃけた話、俺は決闘から逃げようが食ってくには困らない。
けれど、ライリーは違う。
ライリーの場合は、卒業後に相応の就職先を考えているらしく、ここでこの決闘から逃げると、それこそこれからの人生がガラリと変わってしまうのだ。
逃げた負けたとなれば、出世にも響くのだとか。
「もちろん受けるよ」
と言いつつ、ライリーは何故か俺を見てきた。
釣られるように、リリアさんも俺を見てくる。
「カキタは?」
俺は、今朝の先輩トリオ&イルリスさんとのやり取りを思い出しながら答えた。
「おもしろそうだから、受けてみるよ」
口にした後、姉の顔が浮かんだ。
この学園から勧誘の先生たちが来た日のことが、思い出された。
あの日の姉の言葉が脳内で響く。
――こんなイベントそうそうないわよ――
――なにより、楽しそうじゃない。
予定とちがうことって――
――何事も経験よ――
リリアさんとエリ姉が、どこか呆れた表情になる。
「さすがに、人生がかかってる勝負事を、『面白いから』って理由で受ける子がいるとはねぇ」
エリ姉の表情が呆れから、苦笑に変わる。
「でも、入試のときのこともあるし、カキタが負けるとこは想像つかないな」
リリアさんも苦笑しつつ、そんなことを口にした。
すると、ライリーが、
「俺は負けるっておもってんですか~?」
と軽口を叩いた。
さて、その日のうちに俺たちの決闘に関して学園中が知ることとなった。
俺たちがなにかすることは特になく。
気づくとお祭り騒ぎにまで発展していた。
※※※
「店長ー!!レジがレジがー!!」
黒猫亭で新人の子が絶望的な声を上げる。
「あー、はいはい。
ちょっと落ち着こうね」
呼ばれた店長こと、シェルはそう言ってパニックになっている新人の横についた。
なにがどうしてどうなっているのか、新人の子に訊ねる。
目の前には、おだやかな老婦人。
その後ろには長蛇の列が出来ていた。
列は店の外にまで伸びている。
「あー、ジャーナル、レシートが詰まったみたい。
申し訳ありません、お客様、少々お待ちください」
シェルは老婦人に頭をさげ、テキパキとレジジャーナル――レシートの交換を行う。
その際、新人への教育と説明も忘れない。
「ここを押して、パカッと開くから。
そしたら、このジャーナルレシートの予備をカタツムリの形で置いて、閉める」
「ありがとうございます!」
新人の子は、シェルに礼を言い、続けて待っていてくれた老婦人へ声をかけた。
「お待たせしました!」
そうして次々に会計を済ませていく。
そんなこんなで1日があっという間に過ぎていった。
閉店時間間際になると、さすがに列も消え、閉店作業へとうつる。
「店長の弟さん、大変ですねー。
そういえば店長は見に行くんですか?
ちょうど定休日だし」
バイトリーダーがおもむろにそう声をかけた。
新人の子は、一生懸命床掃除をしている。
「大変?
見に行く??」
なんのことかわからずに、シェルは聞き返した。
「ほら、決闘がどうとかでSNSでものすごく話題になってましたよ」
「決闘??」
シェルは弟のカキタから何も聞いていなかったので、いまいちバイトリーダーの話がのみこめなかった。
「なに、誰かと喧嘩でもしたの?あの子?」
「
バイトリーダーは閉店作業の手は止めず、説明した。
弟のカキタが、学園で決闘を申し込まれたこと。
それが大々的に行われること。
一般人も見に行っていいと、発表があったこと。
「なるほどねぇ。
せっかくだし、ラト君と見に行こうかな。
それにしても、あの子、なんにも連絡寄越さないんだから」
日帰りで行き来できるうえ、連絡手段は豊富。
けれど、カキタからは電話はおろか、メッセージすらほとんどこない。
「まぁ、まだ二週間?一ヶ月くらい?
ですからねぇ。
学校に慣れるまでは余裕が無いんじゃないですか??」
「まぁ、そうかもね。
うん、どうせだし顔見に行ってみようかな。
その決闘する日って、いつなの?
定休日の日ってことは、来週か再来週よね?」
今週の定休日は昨日である。
「再来週です」
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