第1章小学生編- 第1話 いつもの光景
いつものように
塾へは送迎バスで向かう。自宅近くを通る定期便のバスに乗り込み塾へ行き、もちろん帰りもそのバスで乗り込んだ場所まで送り届けられる。今年で塾通いも4年目。昭子は小学4年生になっていた。
昭子の家は、いわゆる”教育熱心な家庭”というわけではなかったが、両親が共働きのため、子供の勉強を見る時間がないということから塾通いを選択したのだ。両親の思考など当時の昭子は考えもせず、学校が終わると塾へ行くというルーティンになんの不満もなかった。塾は、進学塾ではなく、学年ごとにそのカリキュラムを各学校ごとの進み具合に合わせて教えてくれるため、勉強に躓くことも4年生になった時点では何も感じなかった。
塾がない日は自宅で自分から勉強をする時間を決め、その時間に宿題や予習、復習をする。昭子にとってはもはや当たり前の1日の流れとなっていたため、特に疑うこともなかったのだ。
*****
この日も下校した昭子は塾の準備をし、送迎バスが来る場所に来ていた。定時刻にバスは到着し、それに乗り込み塾へと向かった。そして2時間の授業を終え、帰りのバスに乗り込んだ。
同じバスに乗るメンバーはほとんどが毎回同じ。小学校が同じ子はいなかったが、同じ学年の子も多かったため、バスの中ではいつも賑やかに喋りながら自分たちが下りる場所に到着するのを待っていた。
一人降り、また一人降り、バスの中の人数は塾を出た時に乗り込んだ人数の半分となっていた。次は昭子が降りる番。毎回、次に降りる子がドア付近に移動して立っている。スムーズに降りられるようにだ。昭子も降りる準備をしてドア付近に立ち、手すりに掴まっていた。
昭子が降りる直前に生徒が降りた場所から昭子が降りる場所までは、片側一車線の直進道路がある。送迎バスはいつもその道路は、制限速度よりも早く走る。残った生徒たちもその速度のスリルが好きで、ちょっとしたアトラクション気分になれる道路だ。
「いけーーーー!」
生徒のひとりがそう叫んだ。それを皮切りに、他の子たちからも同じように煽るような声が車内に響き渡った。運転手は学習塾で講師をしている大学生。子供たちに煽られれば、調子に乗りアクセルに置いた足はその板をどんどん強く押した。
この日は少し小雨が降っていたが、そんなことお構いなしにバスはどんどん加速していった。普段はないものが目の前に飛び込んでくるまでは。
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