第6話 異世界のダークエルフ
私の名はエルカライザ・サウザンド・ダークウッドという。大陸西南端にある大森林の最奥にある暗闇の森にすむダークエルフの一族の出自である。暗闇の森一族の族長ルドルフは私の父である。
森での生活はそれはそれはつまらないものであった。
私はそんな森での生活が嫌になり、暗闇の森を出た。
あんな生活をあと何百年もしなければいけないかと思うとぞっとする思いだったからだ。族長ルドルフは外の世界は危険だといったが、私はその危険こそを歓迎した。
暗闇の森を出て初めてしったのだが、人類世界は魔族と激しい戦いを繰り返していた。
どうやら戦況は人間世界のほうが不利なようだった。
大陸各国は魔族に対抗できる人間を招集していた。
人間の世界に出た私は追放された転移魔術師ユーマ・ユリウスと出会った。
彼は転移魔術を得意としていたが、攻撃防御魔術が不得手でそのためSランクパーティ竜の牙を追放された。
とある町の酒場ルイーダでほとんど水のような安酒を飲んでいるユーマと私はであった。
私は彼の能力が使えると考えた。
彼の転移魔術を使えば前線の魔族と戦う部隊に物資を送り届けたり、魔族側の領土に侵入してもすぐに脱出することができた。
ユーマとともに私は数々の依頼をこなした。
いつしか私たちはA級パーティに昇格した。
冒険を繰り返すうち。私はユーマにひかれていった。
彼は物語を語るのを得意とし、野営のときなどはユーマの話をききながら眠ったものだ。
ユーマはよく私の胸や尻を見ていたが、決してふれることはなかった。一度くらい手を出されても私はよかったのだが、生真面目な彼はそれはしなかった。そうされてもいいぐらいに、私はユーマのことを気に入っていた。
真面目で優しく、恥ずかしがり屋、臆病で酒が弱く、そしていつも私のことをユーマは気遣ってくれた。
そんな私たちに勇者パーティから勧誘の手紙が届いた。
魔族との戦争は圧倒的に人間側が不利だった。
魔族を束ねる魔王の力は圧倒的で人間側の王国はいくつも滅亡させられた。
人間世界は魔王との闘いを終わらせるため、異世界から伝説の勇者を召喚した。
それが勇者ロータス・アメジストであった。
私たちはその勇者ロータスのパーティに参加するため、国境の町へと向かった。
だが、その旅のなか私たちは魔族の軍団に包囲された。
どうやら人間側での裏切りがあったようだ。
激戦の中、ユーマは私を国境の町に強制転移させた。
ユーマは私を逃がすために死んだのだ。
転移魔術の術式を完成させる時間があれば彼も生き残ることができたと私は後悔した。
私にもっと力があればユーマを死なせることはなかったのに。
転移させられる直前に聞こえたユーマの言葉が頭から離れない。
勇者ロータスと合流した私は魔王討伐の旅にでた。
魔族領の奥深くに侵入し、約一年がかりで私たちはついに魔王を討伐した。
魔王の強大な魔力によって統率されていた魔族の軍団は一瞬にして崩壊した。
結束力の高い人間側の軍団は魔族の軍団を各個撃破することに成功した。
もちろん私もその戦いに参加した。
魔族軍をほとんど駆逐した私たちに賢者ミハエルがある報告を持ってきた。
とある場所で異世界とのゲートが確立されたというのだ。
そこは魔術師ユーマの最後の地であった。
賢者ミハエルの推測では魔術師ユーマの死の直後に彼の魔力が暴走し、異世界との通路がつながったというのだ。
そしてその異世界というのが勇者ロータスの生まれ故郷であった。
召喚されれば戻ることができないのが勇者召喚の儀式であった。
だが偶然にも戻る手段ができたのだ。
私は勇者ロータスと共に彼の世界に行くことにした。
何故なら、賢者ミハエルの探知スキルにより魔術師ユーマの魂がその世界に転生していたことがわかったからだ。
私は異世界で魔術師ユーマ・ユリウスの転生した人間を見つけ出した。
それが佐藤優真であった。
勇者ロータスこと如月蓮の計らいで彼が通う学校に入ることができた。
私は彼が死に際に発した約束を守るために佐藤優真に近づいた。
彼は生まれ変わってもまるで変っていなかった。
生真面目で優しく、それでいて私を熱い目でみる。優真との会話は生きていた中で一番楽しいものであった。
優真との逢瀬を繰り返すうち、私はさらに彼に魅かれていった。
ただ問題が一つあった。
元の世界とこちらの世界がつながったことにより、怪物や魔物がこちら側にもやってくるようになったのだ。
私は勇者ロータスと共にこの世界の脅威となる魔族魔物らを駆逐した。
「まったくどうしてデート中にかぎってこいつらはこっちにやってくるのよ」
私は魔剣アロンダイトでオークの首を跳ね飛ばす。
こちら側にくるのがそれほど強くない魔物たちがわずかな救いであった。
「すまないな。いつもデート中に呼び出して」
神剣ルクナバートを如月蓮は華麗に振るう。
蓮が神剣ルクナバートを一振りするとゴブリンの集団が灰塵と化した。
私は早く戦いを終わらせ、ユーマとのデートに戻るために汗だくになり奮戦した。
そんあある日のことだ。
二学期ももうすぐ終わりをつげようちしていたその日の夕方、私は優真に告白された。
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