第5話 忙しいデート
公開初日ということもあり、映画館は満員だった。
満席だったけど、絵梨花がすでにネットでチケットを予約してくれていた。
僕たちは売店で飲み物を購入する。
僕がコーラを頼むと絵梨花は優真っちのもらうからいいよといった。
えっそれって一緒のストローで飲むってことなのか。
僕が躊躇していると絵梨花がコーラのLサイズを頼んでしまった。
なんだか絵梨花との距離がまた縮まった気がする。
そうこうしているうちに映画が始まる時間になった。
古海衛監督の最新作「封印されし竜と千年の盟約」は前評判通り、面白かった。
千年を生きる竜が約束をはたすために転生し続けるヒロインを守るというストーリーだ。何度生まれかわっても君を探し出すという竜のセリフに館内は号泣の嵐であった。僕ももらい泣きしてしまった。ぐすんすすんという鼻をすするおとがするのでちらりと隣を見ると絵梨花が号泣していた。
絵梨花って思ったより物語にのめりこむタイプなんだな。
その時には間接キスのことなんか忘れ切っていた。
映画の九十分はあっという間に過ぎた。
映画のラストで人になった竜がヒロインと時空をこえて結ばれるシーンに僕は思わず心の中で拍手をおくる。なんと絵梨花は立ち上がって拍手を送っていいた。それがきっかけで館内に拍手の嵐が吹く。
この様子はネットニュースにも取り上げられた。
映画館を出て、絵梨花と共にサイゼリアで遅い昼食をとる。
「サイゼリアで喜ぶ彼女だよ」
チーズハンバーグを前に絵梨花はふざけて見せる。
僕にスマートフォンで写真を撮らせる。どうやらインスタグラムにあげるらしい。
絵梨花のインスタグラムもフォローする。
そこにはプライベートの絵梨花が載せられていた。
僕は随分前にアプリだけいれていただけなので、フォローしている人は少ない。
すなわち僕のタイムラインはほとんど絵梨花だということだ。
ここでも僕たちはオタクトークに花をさかせた。
途中絵梨花はトイレに行き、十分ぐらい帰ってこなかった。
返帰ってきた絵梨花は何故か汗だくだった。
ごくごくとドリンクバーで入れたコーラを絵梨花は飲み干す。
上下する絵梨花の褐色の喉を見て、僕はエッチな気分になった。
この日以来、休日のほとんどを僕は絵梨花とすごすようになった。
映画を見に行ったり、日本橋のオタロードで買い物をしたり、インテックス大阪のアニメイベントに行ったりした。
毎日のようにラインでやり取りし、学校のお昼休みは一緒にご飯を食べた。
絵梨花の友達からは付き合いがわるくなったと愚痴られたものだ。
絵梨花と遊びに行くと時々、十分から長い時で三十分ほどどこかに消えることがある。そのたびに何故か汗だくで帰ってくる。何をしているか気になるが絵梨花はちょっとねとはぐらかす。
まあ、それぐらいは些細なことだ。
最初は絵梨花の美貌と抜群のスタイルにひかれた僕だったが今ではすぐに感動して泣く絵梨花に夢中になっていた。
夏休みがすぎたころには絵梨花なしの生活なんて考えられなくなっていた。
僕は思い切って絵梨花に告白することにした。
何度もデートをするうちにきっちりと形にしたいと思ったからだ。
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