第2話 陽キャな君とオタクな僕

 またあの夢を見てしまった。

 妙にリアルな夢だった。

 僕はベッドからおり、部屋をでる。洗面所で顔を洗う。

 タオルで顔を拭き、うがいをすうる。

 鏡にうつしだされたのはどこからどう見てもオタクで陰キャな自分のさえない顔があった。

 あんな夢を見るのは異世界もののアニメの見過ぎだと思う。

 たしかに異世界もののアニメや漫画、ライトノベルは僕の大好物だ。

 いつか僕も異世界にいってチートなスキルを女神様からもらって、かわいい女の子にかこまれてハーレムを築いて無双したいと思っている。

あんな夢みたいに魔族に蹂躙され殺されるのは嫌だ。

 夢の中で剣でつきさされた感触がよみがえる。

 おもわず吐き気を覚えた。


 僕は朝食を食べたあと、歯をみがき、制服にきがえて家を出た。

 

 僕は大阪府立友ヶ浦高校に通う高校二年生の男子だ。名前は佐藤優真という。

 趣味はアニメを見たり、ゲームをしたり、ライトノベルをよんだりすること。簡単にいえばオタクだ。

 もちろん彼女なんかいたことがない。十六歳になって身長が百六十センチメートルでとまってしまった僕に彼女なんかできるはずがない。

 でもいいのだ。僕には異世界もののアニメやライトノベルがあるからね。


 僕が通う高校は家から電車で二駅のところにある。

 改札をでると同じ制服を着た人間であふれかえっている。それもそうだろう。ここは友ヶ浦高校の最寄り駅で今は通学の時間なんだから。

 オタク友達数人のグループに合流する。

 いわゆり陰キャのグループだ。

 彼らとアニメやゲームの話をしながら、登校するのが日課であった。



 教室にはいり、僕は自分の席でしずかに授業がはじまるのを待つ。

 そうしているとひときわ騒がしくも華やかな集団が教室に入ってきた。

 それはいわゆるスクールカーストのトップに君臨するグループだ。

 とくに目を引くのがバスケットボール部のエースである如月きさらぎ蓮だ。僕と違いその顔立ちは整っており、すらりと背が高い。しかも誰とでも話をするきさくさをもちあわせている。

 もう一人目立つ人物がいる。

 その名は千早ちはや絵梨花えりかといった。

 その見た目は一言で言うなら、ザ黒ギャルだった。目鼻立ちはくっきりとしていて、かなりの美形だ。どうやら彼女の祖母がエジプト人だということだ。まつげなんかばさばさに長い。それにめちゃくちゃ巨乳なのだ。僕の好きな異世界もののアニメにでてきそうなほど豊かなボディをしている。女性にしては背が高く、百七十八センチメートルもあるという。何度か芸能事務所にスカウトされたことがあるという。

 このグループはこの二人を中心にまわっている。

 如月蓮と千早絵梨花は付き合っているらしい。陽キャ同士お似合いだと思う。


 僕は千早絵梨花が教室にはいってくるのを目で追う。

 おはよーと手をふりながら、挨拶している。その特大におおきなおっぱいに視線が釘づけになる。制服のブラウスのボタンが今にもはちきれそうだ。ちょっとジャンプしたらはじけ飛ぶのではないか。

 どうして僕が彼女から目が離せないかというとそれはあの夢にでてきたダークエルフの顔と千早絵梨花の顔がうりふたつだからだ。違うのは耳がとがっているかとがっていなかぐらいだ。


 その千早絵梨花がだんだん近づいてくる。おおきな胸をはずませながら、僕の目の前に腕を組んで立った。

「ねえ、あんたアタシのことずっと見てたでしょう」

 腕を組んだ千早絵梨花が僕の顔を覗き込む。

 おおきなアーモンド形の瞳が僕を見ている。

 教室がざわざわと騒がしい。

「昼休みに中庭のベンチに来な」

 それだけ言い、千早絵梨花は自分の席に戻った。

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