前世の思い出は陽キャの君と共に

白鷺雨月

第1話 前世の夢

 ユーマたちは魔族の兵士たちがとりかこまれていた。

 ざっと見渡すと敵、敵、敵であった。

 背中にユーマは硬さと冷たさを感じる。

 それは鋼鉄であった。

 ユーマのは背中を守るのは魔法騎士のエリカであった。

 エリカは長剣を両手持ちし、ユーマをちらりと見る。彼女は肩で息をしている。絶体絶命のこの場で笑みすら浮かべている。


「ユーマ、すまない。私の責任だ」

 そう言いつつ、エリカは魔族の兵士一人を斬り捨てる。すでにエリカは数えきれないほどの敵を葬っている。疲労の色はかくせない。


「君と組んだときから覚悟してましたよ。これから転移魔法であなたを近くの町までおくります」

 ユーマは宝玉の杖を強く握る。

「だめだ。おまえは私が命をかけて守る。そういう約束だろう」

 エリカはユーマの提案を即答で断る。

「ダークエルフの姫としがない魔術師とではつりあいませんよ。欲を言うとあなたともっと旅をしたかった」

 ユーマは高い音律の呪文を唱える。

 瞬時にエリカの足元に複雑な紋様の魔法陣が刻まれる。エリカの体が光に包まれる。

「やめろ、ユーマ。君と一緒に死なせてくれ」

 光につつまれるエリカが懇願する

「いやですよ。あなたは勇者とともに魔王を倒してください。僕はここまでです」

 ユーマの言葉のすぐあと、魔族の兵士の剣が彼の右肩に食い込む。ほぼ同時に左わき腹に槍が食い込む。どくどくとユーマの体から真っ赤な鮮血が噴き出す。

「エリカ、もしも生まれかわったら僕と結婚してくれますか?」

 消えゆく意識の中でユーマはエリカに問う。

 すでにエリカの姿はそこにはなかった。




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