第7話
それからまた類との戦いが始まった。戦闘モードなのがわたしだけなのが残念だけど。まずは定番のお色気作戦だ。風呂上がりにキャミソールとショートパンツを身に纏って、類に迫る。下着以外で一番露出度の高い恰好のはずだ。
「類~」
ソファーでくつろいでいる類の膝の上に座り、抱きつく。そのまま類の頬に唇を寄せて、反応を窺う。
「風邪ひきますよ」
類はそう言って、ソファーの背もたれに掛けてあったひざ掛けを広げるとわたしの体を包むように巻き付けた。圧倒的敗北だ。薄着でお色気作戦は効果なし。仕方なくちゃんと部屋着に着替えて仕掛け直す。こうなったら押し倒すしかない。わたしの頭ではそれ以上の作戦は残念ながら思いつかなかったのだ。
類の隣に座って、少しずつ距離を詰める。一度こちらを見た類は、わたしの頭を優しく撫でてくれた。
「ねえ類、キスして」
真面目な類はわたしの方にちゃんと体を向けて対応してくれる。これまでもそうだったけれど、類は軽く触れるキスしかしてくれない。
「もっとして」
「……どうしたんですか?」
類は困ったような顔をする。もっと欲しがってよ。苛立ちながら類の首に腕を回して唇を重ね合わせる。何度かそれを繰り返して、類の唇をそっと舐めた。僅かに開いた隙間から舌をねじ込む。類は口の中も冷たかった。ほのかに甘い味がした気がして、味わうように類の舌を吸う。すると、類が急に熱くなってきた。背中に回された手のひらも、類の口の中も。
「美結、これ以上はダメです」
「ダメじゃない。もっとしよ」
「本当に、ダメなんです」
そう言って強い力でわたしを引きはがした類の顔は、惚けているようで、まるで欲情しているようにも見える。なんだ、類だって良かったんじゃん。もうひと押しだ。そう思って、類の二の腕にもう一度触れる。
「熱っ」
それは人の体温とは思えない熱さだった。これまでずっと平熱が低かったはずの類が。これはおかしい。
「類、大丈夫なの? すごく熱い」
「そのうち落ち着くから。今は触らないでください。火傷するから」
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