『太陽が低い』

やましん(テンパー)

『太陽が低い』


 冬が来ると、太陽の軌道がぐっと低くなり、地上すれすれを這うように移動する。


 それも、この、惑星の面白さである。


 わが母なる太陽は、沈むことはない。


 発掘調査も、すでにこの惑星の5年めになった。


 この時期になると、我々には、寒すぎる。


 しかし、仕事は完遂しなければならぬ。


 この惑星に、生命がいたことは、もはや、間違いがない。


 我々は、すでに、化石となった不可思議な生物を発見したのである。


 なんと、炭素を主体とする、驚異の生物だ。


 問題は、文明を持っていたかどうかである。


 その痕跡は、なかなか見付からないのであるが、私は、確信していた。ここには、初期的な科学文明があった、と。


 なんとしても、その証拠を見つけ出さねばならない。


 それが成れば、私は、ついに、我が社会で認められるだろう。


 ひたすらに虐げられた我が生涯が、栄光へと変転するに違いない。


 なんとしても。なんとしても。



    🔪🔪🔪🔪🔪🔪🔪



 その手帳は、そこで終わっていた。しかし、これは、大発見である。


 わたしは、間違いなく、正しい途を歩んでいるのである。


 そうだ!


 わたしは、遂に、異世界文明の扉に到達したのだ。


 ああ。燦然と輝くわたしの未来が見える。


 もう少しだ。必ず、なにか出る。


 わが最新型探知機は、すぐに、回答を、見つけ出すだろう❗



   🍲🍲🍲🍲🍲🍲🍲🍑



 その手記は、そこで、止まってしまっていた。


 惜しいことである。


 が、私はそうしたことには、ならないのである。


 なぜならば、わたしは、すでに、見つけてしまったのであるから。


 この、巨大な物体は、まさしく、その証明である。


 しかも、文字が書いてあるのだ。


 

 『最終型爆弾。TXVV-25』


 これが、なにを意味するのかは、まだ、分からないが、間も無く解決するだろう。


 いずれ、わが文明に栄光あれ❗


 ついに、発見したのだ。


 これこそが、異世界宇宙文明である。



  🍭🍭🍭🍭🍭🍭🍭🍭



 この記録データがある小型宇宙船は、長年、深い宇宙をさ迷っていたと思われるが、その、謎の物体はどこにあったのかは、まだ、分からない。なんらかのエネルギーで、弾き飛ばされたらしき痕跡があった。


 わたしは、いま、『それ』を探す旅に出ている。


 簡単ではないが、必ずや解明できるだろう。


 それが、科学なのであるから。



   🍱🍱🍱🍱🍱🍱🍱🍱



 この、日誌が遺された宇宙船が発見されたのは………………





 終わっているが、終わらないのである。






      🙇










   

   

 


 


 

 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『太陽が低い』 やましん(テンパー) @yamashin-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る