第4話 生まれ変わり③ 怪物

 暗い。ココ、とてモ嫌な部屋。僕はここカら出たイのに、大きな人たちはそれをシてくれない。


「よお、化け物! 生きてっか? 餌持ってきてやったぜ、ありがたく食いやがれ」


 鉄でデきた扉のすきまかラ、今日のゴハンが入ってキた。ゴハン好き。でも、ゴハン、スぐに無くなル。とテも不思議。そレにスぐに眠たクなル。これモ不思議。



「おい、起きやがれ、化け物! 仕事の時間だ」


 夢? せっかク、楽しイことデいっぱいダったノニ、起こされタ。でモ、お仕事ハ大事。ソウ教わった。だかラ、僕はガんばる。痛かッたり、熱カったり、冷たかっタり、苦シかったりすルけどド、我慢スる。我慢シないト、ゴハン貰えなイかラ。



「さて、ご来場の皆様! 次に出て参りますのは世にも珍しい怪物でございます。皆様もご存知でしょう、およそ千年前この地上を襲ったといわれる『大災厄』。それを命を掛けて封じ込めたといわれるおとぎ話でも有名な勇者アーサーと聖女アリア。彼らが決戦の地から連れ帰ったとされる異形の怪物を大公開! その辺にいるゴブリンやスライムなんかとはわけが違いますぜ。心臓の弱いご婦人やご高齢の方はご注意を。ショックで失神されても天に召されてしまっても当方では一切責任は負いません。何卒、自己責任でお願いいたしやす!」


 大きな人、いつモ間違ウ。僕、怪物じャ無くテ、人間。前ハ、お肌モすべすべデ、大きナ人みたイにふたツの足で立っテ歩けたシ、たぶン走っタりしてタはズ。だッてゴハンの後の夢ノ中では、僕ハそうやっテ遊ンデるカラ。


「ひえっ……!」


「き、きゃーっ!」


「ば、バケモノだ。本当に気持ち悪い……」


 黒い覆いガ取らレると、とてモうるさくなル。でモ、大丈夫、我慢デキる。


「さあさあ、ここからがこのショーの見せ所。なんとこの怪物、古の暗黒の力を宿しているらしい。王都の偉い学者さまがおっしゃってるんだから間違いねえ。ですが、いつものことながら疑り深いお客様も必ずいらっしゃる。そこで本日はいつもと趣向を変えて、あっしではなく、王都から有名なSクラスパーティの魔法使いさまをお呼びいたしました! お名前は明かせませんが、その出で立ち風貌からお客さまも只者ではないことを察していただけるものと信じておりやす。では先生! よろしくお願いいたしやす」


 あレ? いつもト何か違ウ。でモ、僕、頑張ル。


「ひゅー!」


「ああ、なんて綺麗なひと……」


「もしかしてエルフなのか?」


 本当ダ。とてモきれイなオ姉さんガデてきたヨ。でモ、どうシてそんナ顔ヲするノ? お腹デも、痛いノ?


「ファイアーボール!」


 ぎゃア! 熱イ、熱イよ。大きな人ノ火ヨりもずっト熱い!


「御覧ください皆様! 一流魔法使いの魔法攻撃を受けてもこの怪物は生きております! さらに焦げて炭化したはずの身体がみるみる修復しているではありませんか! 皆様はこんな怪物をご覧になられたことがありますでしょうか! これこそこの怪物が忌まわしき存在である証拠です。ああ、残念ながらもうお時間となってしまいました。では次の出し物に……」


 

 あレ? ゴハンも食べテないのニ、僕、眠ってタ。ゴハンは……あっタ!


「あの……」


 ゴハンのトきは、話しカけなイで欲しイな。ちょっト、待ってテ……。あレ? 大キな人じゃないヨ。さっキの綺麗ナお姉サんだ! どうシよウ、ドキドキする。身だシなミは大丈夫かナ? あア、忘れテた。僕、髪ノ毛、全部抜けチャったンだっタ。


「私の言葉は分かりますか?」


「ワカ、ル」


 ひサしブりだかラ、上手ク言葉ガでなイや。


「良かった。御師さま、あなたの枷はとうに外れているはずです。こんな状態を続けていらっしゃる理由が私には理解できません。どういうわけか『調停者』にも気づかれていないのが幸いなのですが、もう私のほうが耐えられません。どうか今日こそ今生の生を手放すことに同意いただけませんでしょうか?」


 むムム、お姉サんの言っテる言葉ガ難しクてよく分かラないヨ……。


「もしや、一ヶ月前に私がここに来たことも忘れていらっしゃるのではありませんか?」


 なんトか、今ノは理解できタ。


「オボエ、テ、ナイ」


「ああ、なんてこと……」


 オ姉さんガ、泣イていル。僕モ悲シくなっテきた。


「オナカ、イタイ、ノ?」


「いいえ、そうではありません。私は御師さまに死んでいただきたいのです」


 オシサマ? 誰? 死ヌのは良くナいこトだよ。


「死ヌ。イケナイ、コト。デモ……、オネ、エ、サン、僕ニ、死ンデホシイノ?」


「変なことを言っているということは自覚しております。ですが、私は御師さまをこの過酷な環境からお救いしたいのです。それには同意が、この世界を離れても良いという同意が必要なのです!」


 オ姉サんが、一生懸命なのガ分かっタ。そうだ、お母サン。お母サンが、女の子ヲ泣かシては駄目だッて言ってタよ。ドうして僕ハこんナ大事なコとを忘れテいたんだろウ?


「イイ、ヨ、僕ヲ、殺シテ」


「はい……」


 ぴカぴかノ綺麗なもノが、僕ノ中に入っテくるル。あレ? 不思議ダ。いつモなラすぐ二治るノニ……、何だカ、眠イよ。そうカ……ゴハン、食べタ。カラ、だ、ネ。


 

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