第23話 情報屋

「あんたが闇商人のハンザか?」

「……何の用だい?」

 

 フィアナと二人、娼館の路地裏を訪れる。

 娼館の裏路地、そこにはフードをかぶった男が座っていた。

 フードからチラリとやや長い耳が見える。

 エルフというには、少し短い。

 情報にあった通り、ハーフエルフである。

 人気は殆ど無い。

 念の為あたりを気にしてから話しかける。

 

「カルラに要件がある」

「……」

 

 すると、ハンザは立ち上がる。

 

「……こっちだ。ついて来い」

 

 すると、ハンザはそのまま娼館の裏口に入る。

 フィアナと顔を見合わせ、頷き合い、一緒に入って行く。

 どうやら物置に繋がっていたようで、荷物が高く積まれた小さな部屋に通される。

 

「……少し待っていろ」

 

 ハンザはそう言うと、反対側の扉を開け、そのまま娼館の中へ入って行く。

 

「……フィアナ。君の考えは正直、さすがだと思う。そして、今回の駆け引きは任せた。随時手助けもするが、今回は君に頼らせてもらうよ」

「はい。お任せください。あなたから頂いた知識、最大限に活用してみせます!」

 

 すると、すぐにハンザが戻って来る。

 

「あんたら、初めての客だな? なら、ここで暫く待ってろ。そうすれば、間もなくカルラが来る。俺は戻らせてもらう」

「……あぁ。ご丁寧にどうも。そうだ。あんた、闇商人としても活動してるんだよな?」

 

 ハンザは娼館を出ようと出口の扉に手をかけていたが、呼び止められ、振り返り答えた。

 

「あぁ。何か売りたい物があれば受け付けるぞ。だが、今はそちらに集中するんだな」

 

 そう言うと、ハンザは今度こそ出て行く。

 すると、程なくしてカルラが入ってくる。

 

「よぉ、さっきぶりだね。そっちの嬢ちゃんも一緒か。まぁ、そこはどうでも良いけど、代金は用意できたんだね?」

 

 カルラの問いに頷き肯定する。

 嘘は言っていない。

 

「そうかい。じゃ、知りたいことを言いな。この周囲から人払いはしてある。それに、この部屋は防音設計だ。聞き耳立てられても大丈夫だよ」

「……」


 少し気になる事があったが、今は突き止めない。

 そして、フィアナが答える。


「はい。聞きたい事は複数あります」

 

 フィアナが口を開いた事に対し、カルラは少し驚き、こちらを見てくる。

 それに対してこちらも頷き、察してくれる事を願う。

 すると、カルラも頷き返し、察してくれたようだった。

 

「まず一つ目は、我々が魔王領側へ渡る手段について知りたいです。方法があるのか無いのか、あるのならばその方法も」

「へぇ……もう一つは?」

 

 フィアナはすかさず返す。

 

「もう一つはこの街で泊まれる宿についての情報です。魔王領へ出る方法が分かっても分からなくても、この街には数日いることにはなります。現在、私達の人数が泊まれる宿は見つかってないので、その情報も欲しいのです」

 

 そのフィアナの言葉を聞き、カルラは頷いた。

 

「分かった。知りたいのはその二つで良いんだね?」

「はい。お願いします」

「あぁ。了解した」

 

 すると、カルラはキセルを口から外し、煙を吐き、答える。

 

「二つ目のともかく、一つ目のは高いよ? 懐事情は大丈夫かい? そうだね……ざっと……」

「いえ、お金は払いません」

 

 フィアナは臆すること無く言う。

 

「代わりに、私達の持つ情報と交換でどうでしょうか」

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