第24話 駆け引き
「へぇ……中々面白い事を言うお嬢さんだ。佐切、あんた面白い手駒を持ってるね」
「……いや、正直に言えば、俺の差し金じゃない。フィアナ自身が申し出てきてくれた事でな。今後の為にも、完全に任せてある。まぁ、俺の持ち合わせている使えそうな情報は教えてあるが」
すると、カルラはフィアナの事を見つめる。
「うん、認めよう。佐切、このお嬢さんは将来大物になる。大事にするんだよ」
「あぁ、勿論。そんな事は魔王派の軍師になった時から決めている」
すると、フィアナが少し反応する。
「ここに居ない仲間も含めて、全員死なせる事は無い。俺が全身全霊で皆を守る。まぁ、そんな力は無いから、知恵を振り絞るだけだがな」
「へぇ……良い軍師殿に恵まれたね」
カルラの言葉にフィアナは頷く。
心なしか、フィアナの耳が赤いように感じた。
「で? 代わりの情報ってのは何だい? その情報によって、代金に届かないようなら何割かまけてやるし、余分に情報をあげても良い」
「良いのか?」
「あぁ、お釣りって奴だよ」
そして、フィアナの方に手を置く。
「よし、後は頼んだぞ。出来る限りこちらが求める情報と同程度の価値の情報を打ち明け、こちらの情報のカードは温存しておくんだ。今後とも利用させてもらうことになりそうだからな。手の内を全て曝け出したら今後交渉出来なくなる」
「……はい。頑張ります」
そして、フィアナは喋り始める。
駆け引きが始まる。
「まず、私達が提供できる情報一つ目は、佐切様と共に召喚された勇者の全員分のスキルです。その情報で、こちらが求める情報、どれ程買えますか?」
どうやらフィアナは一番大きいネタを出したようだ。
恐らく、こちらの手札には最初に出したカードなんて目にならない程のカードが大量にあるぞ、と見せつけるためであろう。
「どれ程買えるか……か、面白い事を言うね」
すると、カルラは頷く。
「うん。代金としては充分だ。因みに、他にはどんな情報を用意してきたのかな?」
「……いいえ、充分ならばこれ以上お話出来ません。ただ、カードはまだ両手で足りなくなる程は用意してきてる、とは伝えておきましょう」
「……」
フィアナのその発言に少し驚く。
カルラとしては恐らく、自分のカードを隠したまま、相手の手札の片鱗だけでも引き出そうとしていたのだろう。
それを見抜いたフィアナは、それを防いだのである。
「アハハハ! 佐切! あんた本当に面白い娘を抱えてるね! 良いよ! それで手を打とうじゃないか!」
どうやら、カルラはフィアナを気に入ったようであった。
そして、説明を始めた。
「まず、この街を魔王領側へ抜ける方法、だね。まぁ……ある」
カルラは木箱に腰掛け、続ける
「実はね、この娼館の地下に魔王領側へ抜ける地下道がある」
「……え?」
「あぁ。実はあるんだ。で、その情報は徹底して秘匿されている。その理由は、私達エルフが魔王領へ逃げる為だ」
カルラは次々とトップシークレットを打ち明ける。
「ここで情報を集めているのも、後々魔王軍へ情報を渡す為。泊まる宿も私が口添えすればすぐに用意出来るさ。後は……」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
すると、流石にフィアナが止めに入る。
「さ、流石にお釣りが多過ぎる気が……」
「いいや、フィアナ嬢ちゃんていう面白い子も見せてもらえたしね。勇者のスキルの情報と合わせれば、これだけのお釣り出るさ」
カルラは笑顔で続ける。
「あんたらとは、今後は仲間として歩んでいくことになりそうだ。ま、そういう事だ。今後とも宜しくね、魔王派の軍師殿、そして、フィアナ嬢ちゃん?」
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