第22話 相場

「……誤解はもう無いかな?」

「……はい」

「……」

 

 あの後、まず時間を充分にかけて誤解を解いた。

 フィアナとレナは申し訳なさそうに頷く。

 二人は娼館に入る俺を見かけたらしく、ずっと出てくるのを待っていたのだと言う。

 どうやら、人違いであることを祈っていたようだ。

 決してそういう目的で娼館に入ったのではないのだと必死に説明し、それを理解していたサナンも一緒に誤解を解いてくれた。

 驚いたのは、店の前で騒がしくするなとカルラが出て来た事だった。

 俺自身も驚いたが、フィアナとレナはその美しさとカリスマのような不思議な魅力に引き込まれ、カルラの一言で俺への疑いを晴らした。

 改めてカルラに挨拶し、今は皆合流し、今後について話し合っていた。

 

「まぁ、何はともあれ、彼女……情報屋のカルラは信用してよさそうだ。そして、彼女から情報を得たい場合は金を持っていかなくちゃならないんだが……」

「おう。どれ程必要だ?」

 

 魔王派の資金の管理はサナンが一括して行っていた。

 サナンは荷物を漁り始める。

 

「とは言っても……相場が分からない。因みに、総資金はどれ程あるんだ?」

「あぁ。金貨百枚程だな。後は銀貨と銅貨が少々って所だ」

 

 この世界では、金貨は一枚一万円相当の価値がある。

 銀貨は二千円。

 銅貨は百円である。

 つまりは百万と少し、ということだ。

 

「……少ないな」

「おいおい、そんな事言うなよ。俺達が必死こいて集めた金だぞ?」

「……それもそうだな。まともに世に出れない状況で、どうやって集めたんだ?」

 

 彼等は魔王派、つまりは犯罪者であり、まともに働く事は難しい。

 というのも、魔王派の人間は既にマークされており、王都に顔を出せば掴める危険があるからだ。

 

「まぁ、一昔前まで魔王派だと気付かれていない人間も居たからな。そういう奴らが主導して稼いでくれたんだ。ただ、そいつらも捕まって、今は稼ぐ手段がなくなって減っていく一方だったんだが」

 

 そこで、少し考える。

 つまり、この先も増えることは無いのだ。

 ならば、使う量は考えなくてはならない。

 

「……相場が分からん以上、多めに持っていけばカモにされる。なら、少ない額で値切るのが良いかもな」

「因みにだが、宿はどうする? どこもいっぱいいっぱいで泊まれそうに無いらしいが……」

 

 この街には常に人が出入りしており、空いている宿がなかったのである。

 

「……その辺りも聞き出してみるか。情報屋なら、この街の空いている宿とかも把握しているかもしれない」

「……あの、その情報屋との取引、私もついて行っていいですか?」

 

 すると、フィアナが恐る恐る手を挙げる。

 

「……どうしてだ?」

「……私に考えがあるんです。上手く行けば、お金を出来る限り使わないで情報を引き出せるかもしれません」

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