第26話 マリアの秘策
「おかしいと思っていたのよね」
「なんの話?」
遠くに敵を見据える。ホークは自ら率先してキラの部下に狙われる動きをした。
シンはあの時言っていた。この試験は合格するものよりも足を引っ張るやつが複数存在すると。
考察まがいのマリアの発言に、レイは何を言いたいのかいまいち掴めずにいた。
そんなことより相手を倒さなくていいのかとバレルの照準を合わせられずにいる。
今がチャンスなのだ。
「あの敵、この試験の監督役よ」
「そうだっけ?」
レイがスコープから覗いて目標をよく見た。
しかしいまいち記憶にない。
どんな顔をしていたなんて、いちいち覚えてないというのが本音だ。
「ああ、そうか。レイには見えないものね。今あたしの見えているものを共有するわ」
そう言って、マリアがレイのおでこに手を当てた。
「ルナ、この子にお前の見えてる景色を見せてあげて」
レイのおでこにぼんやりとした熱が加わる。
視界に黒い靄がかかるが、視界はくっきりと映える。なんだったらそれをされる前よりも視力が良くなった感覚さえあった。
「マリアさん、これは?」
「鷹月家の秘奥、精霊ルナよ。普段はホークしか使ってないのだけどね、この子の能力は少し特別なの」
「そうね、確かにこれは秘匿すべきよ」
レイの視界に新たに増設された項目。それは名前と役職の看破だった。
そして犯罪歴も。
これを使って鷹月家はグループを増大させたのだろう。
表向きはホークを使い、その裏ではこのルナで付き合う相手を決めている。
大きくなるわけだ。
信用だけではない打算で動く。
レイの実家とは大違いである。
「マリアさん、あなたはシンさんをこの目で見て何を掴んだの?」
「見た通りなのよ、あの子。裏がない。こういうパターンが一番困るのだけど……打算抜きで命を張って助けに来てくれた。だから私はその覚悟に報いたい。倒すわよ、敵を。あたしは目を。レイ、あなたは照準を合わせてくれる?」
「ええ、この目があれば今の私なら」
蟻の眉間すらぶち抜いて見せる!
追い払うだけでいいと言われてるのに、シンの信頼を勝ち取るためにまたも二人の少女は暴走を始めた。
手にした力で暴徒を鎮圧する気概である。
「ヒット!」
「次を見つけたわ、移動するわよ」
「助かります」
「ピッキー、次も頼むわね?」
「ぴき!」
シンから手渡された鉄のアクセサリーには手紙のほかにピッキーの分体も入っていた。これが今のマリア達の安全性をあげている。
少女二人をすっぽりと包み込んで、それは地面に吸い込まれる様に消えた。
シン曰く【シャドウの相・潜伏】である。
これを得たことで近接戦闘にはめっぽう弱い遠距離特化の少女を助けていた。
移動先はホークにくっついてるピッキーから送られてくる思念で決める。
精霊ルナによる光学センサーでダンジョンの地形を瞬時に把握。
まさに今二人は動く砲台として己の敵を始末しに回っていた。
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