第24話 脱出と合流阻止
キラとシンのバトルが白熱している最中、頭上からマリアの使役精霊であるホークが音を抑えめに舞い降りた。
「ケーン」
「ぴき」
首にマフラーの様に巻かれたピッキーが、触腕を鋭いナイフの様にしてマリア達の拘束を解いた。
「ありがとう、ピッキー、ホーク」
「ケーン!」
もっと褒めていいよ、とばかりにホークは胸を張る。
主人に褒められるのは精霊にとっても誉なのだ。
「ぴき、ぴきき!」
まだやることがあるでしょ、とピッキーがホークの首を優しく叩いた。
「どうしたの?」
「クエー」
思い出したように、ホークはマリアに首を擦り寄った。
硬い感触。
ホークの首には見慣れぬ鉄のアクセサリーがあった。
封を解けば、中には丸められた紙がある。
その中身を読み込んだマリアは、それがシンからのメッセージであるとすぐに気がついた。
「それは?」
「シンから」
「中には何て?」
「この試験会場にはキラの仲間が何人もいるから、それをこっちに引き寄せないでほしいって」
うまいこと分断してるのだ。連携は取られないに限ると書かれている。
もしも数が揃ったら、逃げられる可能性がある。
それを潰してほしいと指示が出されていた。
「シンは? 手助けしなくてもいいの?」
「大丈夫って、まだ見せてない力があるみたい!」
どうせここにいても役に立てない。
マリアはそれを嫌というほど知った。
自分じゃキラをどうにかできない。
手を出すべき相手じゃなかった。
自分が間違っていたと捕まってから知った。
一度しかない人生を、棒に振り過ぎているとシンにあれほど注意されたのに。
その言葉に聞く耳を持ってなかったのは他ならぬマリアである。
今手負いの自分にはキラに決定打を与える術がない。
そしてそれはレイも同じ。
無様に捕まった二人がシンの戦いに混ざったとして戦力に数えられるかは微妙なところだった。
「キラの部下はどうやって見分けをつけるの?」
ハンターに紛れていたら判別できない。
レイの心配も尤もだ。
「それも大丈夫、ホークとピッキーが見分けてくれるから。あたし達は遠くからそいつを攻撃すればいいだけだって」
「だったら、なんとかなるかな?」
お互いに遠距離攻撃は得意だった。
シンがこの場にいないのだけが二人にとっての懸念案件。
今までシンがどれほど二人を守ってきたかを知っているのは他ならぬ当人達。
今更自分のために「やっぱりこっちにもきてくれ」とは言えない。
そんな不安に暮れるレイに、マリアは両頬に気合を入れた。
「なんとかするのよ! シンをあたし達の都合に付き合わせてるんだから、これくらいはしなくちゃ!」
レイはそれもそうだ、と自分がどれほどシンに迷惑をかけていたかを思い出す。
勝手に出ていって、どれほどシンの計画を狂わせたか定かではない。
汚名は返上しなくちゃ。
挽回できるほどの名誉はまだ持ち合わせていないから。
二人の顔には今になって真剣味が湧いてきていた。
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