第17話 あんな仕事引き受ける人がいるんですのね
ダンジョンの奥深く、行き止まりの奥地で。
まだハンターになりたてなのだろう、どこか夢を抱いている無防備な少女が屈強な男達に羽交締めにされていた。
「へへへ、こんなダンジョンの端っこで助けを呼んでもだれもこねぇさ」
「兄貴、ちょっと味見しても構いませんよね?」
「馬鹿野郎、依頼人は純潔をお求めだ。自ら価値をなくしてどうするってんだ」
「じゃあ、摘出したあとなら……へへ」
「そういうことだな」
「んーーーー! んーーー!」
猿轡をかまされた少女は悲痛な悲鳴をあげた。
体を物色され、肌を露出させられた。
そこにあてがわれたナイフはひんやりと少女の肌をなぞりあげている。
丁寧に衣服は切断され、顕になった肌をダンジョンのネットリとした空気が撫で上げる。
「お優しい依頼主様はよぉ、情けねぇ俺たちをお救いくださるためにこんな依頼を定期的によこしてくれるのさ」
少女に見えるように、依頼内容を見せる。
その内容の悍ましさに、少女は震え、下腹部を濡らした。
無理もない。だれだってこれからされることを想定すれば失禁もやむなしだろう。
男の口ぶりからも五体満足で返してくれるとは到底思えない。
少女は自分の運命はここまでなのだと観念していた。
駆け出しでお金もなければ信用もない少女、助けたところで見返りは少ない。
そこへ、真っ黒いゴブリンが現れた。
「ゲゲ」
男はお楽しみを邪魔されたことに舌打ちをし、仲間に討伐に向かわせる。
仲間の強さにはそれなりに信頼をおいていた。
ゴブリンくらいはワケもないだろう。
男はお楽しみを再開しようと手を伸ばそうとして……
「あれ?」
自分の肘から先がないことに気がついた。
「お、おお俺れれれれれの手が!」
不思議なことに血は出ていない。
黒い何かベッタリとしたものが肘から先を蝕んでいるのだ。
それはゆっくりと広がりながら、男の体を包んでいく。
振り返った先でも同様に、仲間が黒い粘液に包まれている光景だった。
「んーーーーー!」
猿轡をかまされた少女は叫ぶ。
なんなら男に暴力を働かされる以上の恐怖に顔を引き攣らせている。
何せ目の前で自分を襲った男たちがモンスターに捕食されているからだ。
意識を奪うのには十分な情報量だった。
そこに現れた二人組。そう、シンとマリアである。
「ねぇ、女の子、気絶しちゃってるようにも見えるんだけど」
「男たちに乱暴されそうになったんだよ。その状況を思い浮かべたら僕だって気絶を選択するさ」
多少の汚れは気にしないシンは女の子の猿轡を外してからおぶった。
逃走経路はすでに確保してある。
先導はシンが行い、もしも追撃があった場合はマリアの精霊術に任せる手筈になっていた。
しかし追撃は来ず。
シンたちはダンジョンの外に無事帰還できたのであった。
「無事、逃げ切れたみたいですわね」
「ピッキーが目撃者の目をあらかた隠してくれたおかげだね」
「居合わせた人物の誰が敵かわからなかったですもの、ナイス判断ですわ」
「ぴきき」
ピッキーは胸を張るポーズをした。
「お手柄といえばホークもそうだよね?」
「ケーン」
「上空からの警戒は精霊使いの基本でしてよ?」
「本体が弱っちぃもんね」
「お黙りなさい!」
これはお互いに親しいからこそ言える軽口だった。
精霊使いの本体が弱いのは事実である。なお、テイマーも人のことを言えないことだけ記しておこう。
アスカに鍛え上げられたシンだけは例外もいいところだが、一般的にはテイマーの本体もよわっちぃ部類に入れられた。
「で、この子どうする?」
「まだまだ狙われる危険もありますでしょう? 目が覚めるまで保護するというのはどう?」
「僕達が?」
「助けたら最後まで責任を持ちませんと」
「この身なりじゃ、僕達と一緒の可能性もあるけどね」
「文無しですか……どちらにせよ、見て見ぬ振りはできませんでしょう?」
「そりゃね」
何だかんだと言いながら、見過ごせない二人だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます