第7話 テイマーの種類


「チャリオット、レディ」


腰から短剣を引き抜く。

否、それは短剣ではない。

銀の短剣がどろりと溶け落ち、それは肥大化した。


アスカの体が真っ黒のボディスーツに覆われる。

その上から銀色のアーマーがスーツを覆った。

その銀色の形状は先ほどの短剣のような鋭利さを併せ持っていた。


「と、まぁこれがあたしのバトルスーツよ」


ヒュカッ。

腕を振るうだけでブレードが空を割いた。

そのブレードはスライムなのだろう、自在に形を変えては全く別の武器となった。

アーマーも軽装から重鎧まで千差万別である。


「あの、これを僕に見せた理由は?」

「シン、ピッキーはレア個体よ。今回あたしが派遣されてきた理由は、それの扱い方をあなたに教えるためだったの」

「ピッキーが?」


実感が湧かない。先ほどのアーマーと同じようなことがピッキーにもできる?


「実はあたしの異能も、最初はテイマーと断じられたのよ。そのせいでえらい遠回りをさせられたわ」


でも実際は違った。

特殊個体のスライムと一緒に強くなる、バトルライダー。

それが正式なジョブ名であると名乗る。


「僕も、お姉ちゃんと同じ力を?」

「ええ、でもそれを扱うにはそれなりに厳しい修練が必要なの。誰でも簡単になれるものではないわ」

「ですよね……」


そんな上手い話があるわけがない。

シンは自分に秘められた能力があるとわかっただけでも前向きになれていた。


「でもその試験を見事パスして見せた。シン、あなたは伸びるわ」

「え?」


そんな試験、いつしたのか?

何だったらレストランでおいしい食事をしたぐらいしか思い出せない。


「あ!」

「気付いたわね? そう、修練とはモンスターの血肉を食せるかどうかなのよ。あなたはあの料理を食べてどう思った?」

「説明を切った時は気持ち悪かったですけど」

「食べてみたら案外美味しかったんじゃない?」

「はい!」

「本当はね、この素質に開花する子は珍しくないの」

「そうなんだ」


しゅんとするシン。

自分だけが恵まれた環境にいるわけではないと聞いてがっかりした。

自分はその中でも落ちこぼれなんだ、と自己評価はどんどん下がっていく。


「でも、この修練をパスできる人ってとても少ないの」

「じゃあ、僕は?」

「合格よ。もし不合格だったらここには連れてこなかったもの」

「僕は、ハンターになれるんですか?」

「すぐに強くなれるわけではないわ。道は険しく厳しいものよ。それでもやりたい?」

「はい!」


自分だけならいい。けどピッキーにもっと美味しいものを食べさせてあげたいと願ったシンは、その質問に声高々に返事をした。


「ぴー!」


シンクロするようにピッキーも答える。

その駆け出しコンビを見て、チャリオットと名付けられたスライムもやる気を見せていた。

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