第4話 ピッキーの変化
翌日。
ピッキーの体色が明らかに真っ黒になっているのにシンは驚く。
「ピッキー、お前その体、どうしちゃったんだ?」
「ぴー?」
ピッキーそのものは特に何の変化もないとばかりにぽよんぽよん跳ねていた。
「何ともないのか?」
「ぴき!」
ならいいか。シンは見た目こそ違ってもそれがピッキーなら大丈夫だとどこか安堵して仕事に向かった。
しかしハンターズギルドでは、瞬く間に人に囲まれてしまって。
「シン君、これは一体どういうこと?」
「あの、むしろ皆さんなんでそんなに怒って?」
「そこにいるのはブラックスライム。Aランクモンスターに該当するスライムよ。そして一度もテイムできたという報告を聞かないわ。もし私たちに害をなすために持ち込んだというのなら、私たちはあなたを捕まえないといけなくなるの」
「この子はピッキーです」
「本当に? 嘘はついてないでしょうね?」
「そもそも僕がそんな高ランクダンジョンに単身で赴けるわけないじゃないですか」
「それは確かにそうね。あなたの弱さは私たちが何よりも知っているわ」
それはそれで悔しい思いをするシン。
別に好きで弱いわけじゃないのにと思いながら、ピッキーを取り上げられてしまうのだけは何とか阻止したかった。
「絶対に暴れさせたりしません! だからこの子を、ピッキーを危険視するのはやめてくれませんか?」
「すぐには信用できないけど、数日Aランクハンターと一緒に生活してもらいます」
「その間お仕事なんかは?」
「ご飯ぐらいは出すわよ」
食事をもらえるのはあり難い反面、その間仕事に空白期間が開くのはいただけなかった。それというのはピッキーの食欲の問題もあった。
青くてふわっとしている時よりも、明らかに食べそうな雰囲気を醸し出していたからだ。
その上でいつの間にか上がったハードルの高さに、シンは一人だけ置いてけぼりにされてしまったのでは? という錯覚に陥った。
「今日からお世話になるわ。その子が例のスライム? 確かに報告通りに真っ黒ね」
「シンです。この子はピッキー」
「ぴき」
「アスカよ」
「え!」
アスカといえばこの区域で一人しかいない。神薙アスカ、その人だろう。
「Aランクの人が来るって聞いてました」
「そうね、実は無理言って、ねじ込んでもらったの」
「どうして?」
「あなたが面白そうだったから」
「僕が?」
「ええ、男の子の格好をして生活するあなたに興味が湧いたの」
「僕は男ですよ?」
身じろぎしながらシンは体を両手で覆い隠した。
どこでバレた? その表情にはそう書いてある。
「安心なさい。別にとって食べやしないわよ。こんな環境で女だって言い張って生きていく方が大変だものね」
あたしもそうだったわ、と付け足してアスカは席に着いた。
「はぁ……」
シンは黙りこくりながら、この人と一緒に生活して大丈夫だろうかと不安を覚えた。
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