第3話 解体のお仕事
「やぁ、シン。お前が引き受けてくれて助かるよ」
「今日もよろしくお願いします」
そこがギルドの解体場。ハンター達が持ち込んだモンスターの素材を剥ぎ取る場所だった。
そこでは魔石や食用の肉なんかをとった後のゴミが大量に積み上がっている。
モンスターの死体はとにかく燃料をバカ喰いするほど熱に耐性を持ち、ごみの焼却場では取り扱いNG扱いにされていた。
だからこそ、この仕事を引き受けるのは超火力を持つ異能の使い手か、スライムなどのモンスターをテイムしたテイマーぐらいしかいないのである。
テイマーをやっててわざわざスライムをテイムする輩は数えるしかいないので、シンはこの仕事にありつけていた。
「また今回のは大きいですねぇ」
解体場に吊り上げられていたのは、見上げるほどの巨体で。
肉や必要な部位を取り出された後にしたって1日じゃ終わらないほどの図体があった。
「オーガだって聞くぜ。Aランクハンターが持ってきたんだ」
「近くのダンジョンでAランクモンスターが?」
シンは妙だなと首を傾げる。
そんな物騒なモンスターが暴れる地域に住んでいる自覚はなかった。
ただでさえよわっちぃシンである。
遭遇したら命の保証はない。
ただでさえ、モンスターはしょっちゅうダンジョンから這い出てくるのだ。
想像して、身を震わせていると解体屋の親父、シゲルは手を横に振って否定した。
「いやいや、これは近場のダンジョンから運ばれたもんじゃねぇよ」
「ではどこから?」
「近々生誕祭があるって話は聞かねぇか?」
「誰のです?」
「うちの地区のエース様さ」
神薙アスカ。うちの区域の一番の稼ぎ頭のことだ。
「ああ、確か好物なんでしたっけ?」
「ゲテモノ喰いって言われてるけどな」
モンスターの心臓を好んで食う。それを食べると何らかの能力を発動させやすいのだそうだ。シンはどこか納得いかない顔で、作業に臨んだ。
「ピッキー、行けるか?」
「ぴき!」
それでも、今は仕事に集中しよう。ピッキーに呼びかけ、得意の消化でゴミになったモンスターを溶かしていく。
オーガの死体を消化するのに丸々一日かけてしまった。
「助かったぜ。あのデカブツをやっつけちまえたのはでかい。今回は色をつけといた。また頼むぜ」
「ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げるシン。
もらった金額はハンターと一緒に潜って荷物持ちをした時より多かった。
それでも食事を満足に食べるには程遠い。
「生活するのって大変だね、ピッキー」
「ぴー」
うるさくなる腹の虫を押さえつけながら、シンはすっかり帷のおりた夜の街で新しく謎肉の串焼きを買い足した。
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