第16話 異能の代償

秘書になってしばらくして太宰さんに呼び出された。ノックして扉を開けると太宰さんは椅子に座っていた。でもおかしい。護衛がいない。

「任務?太宰さん」

「いいや、今日は君の異能の代償について話したくて呼んだんだ。」

異能の代償?代償って3人目を作ると消えるとか長く生きられないとかでしょ?

まさかそれ以外にもあるの?

「君の異能は特別だ。異能を作り出せる異能力者なんて、滅多にいない。

だが、大いなる力には大いなる代償が付き物だ。君の、異能を作り出す力の代償は消失。君が死ねば、君は存在ごとこの世界から消える。」

存在が…消える?

銃で撃たれるよりも、ナイフで裂かれるよりも鋭い痛みが私の胸を襲った。

つまり、、皆んなの記憶から消えるってこと?鏡花や敦さんに忘れられるってこと?

樋口にも銀さんにも中也さんにも姐さんにも?

「…でも、太宰さんは異能無効化があるから覚えているんでしょ?」

「そうだね」

「だったらいいの。太宰さんが覚えててくれるのだったら、、別に」

声が震えているのを頑張って隠して笑う。少しでも気を抜くと膝から崩れ落ちそうだ。でもここは太宰さんの前。中也さんに怒られないようにしないと。

自分に大丈夫大丈夫と言い聞かせて笑顔を貼り付けて太宰さんを見る。

「…だったら何故そんな顔をしているんだい?」

「……なんでもない」

水が頬を伝うのを感じる。

やめて。それ以上言わないで。

「敦くんや鏡花ちゃんに忘れられるのがそんなに嫌かい?」

「やめて…っ!!」

2人しかいない広い部屋が静まり返る。此処に中也さんがいなくて良かった。いたら彼の異能で重力に押し潰されて死んでいただろうから。

「ご、ごめんなさい」

すると太宰さんは椅子から立ち上がり此方に近づいてきた。叩かれる…!

反射的に頭を腕で守ってしゃがむ。…いつまで経っても痛みが来ない。恐る恐る顔を上げると太宰さんは優しく微笑んでいた。

「本人には伝えるべきだと思ってね。その先は君次第だ。失うことに恐怖し距離を取っても良い。どうせ失うならばと距離を縮めるのも良いだろう。

でも、よく考えるんだよ。」

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