第15話 三十五人殺しと白い死神

首領に雨窓美玲という人物に会えと言われた。新しく社長秘書になった人。写真を見たけど、いたって普通の女の子。

でも社長秘書と言うぐらいだから実力は結構上のはず。気をつけないと。

私がそう気を引き締めていると、敦にどこで食べる?と聞かれた。私がクレープ屋と言うと、さすがにそれは……と言う敦の、呆れたような、少し悩んでいるような声がする。私が好きな、いつもの会話。やっぱりポートマフィアに戻ってよかった。

「じゃあ鏡花ちゃん、ここは?

 ここならクレープは無理でも、パンケーキとかいろんなものが食べられるよ」

「いいと思う」

私がそう即答すると、敦は私に微笑みかけて、じゃあここにしよっかと言った。

時刻は十八時五十九分。待ち合わせまであと一分。その時、コンコンと、ドアを叩く音がした。

「入っていいよ」

敦がそう言うと、遠慮気味に女の子が入ってきた。写真そのままの女の子。その顔は緊張のためか、強張っている。

「緊張、してるの?」

私がそう聞くと女の子はコクリと頷いた。

「何も緊張することはないよ、ご飯食べるだけだからね。君もお腹すいてるでしょ?」

敦がそう言うと、見る見るうちに女の子の顔が綻んでいく。緊張は解けたみたい。

「僕の名前は中島敦だよ、それで彼女が」

「泉鏡花」

私がそう言うと彼女は小さく、敦さん、鏡花、と呟き顔を輝かせて笑った。

なぜか庇護欲を感じる笑顔だった。どうしてこんなに幼い子がポートマフィアにいるのだろう。

「わたしは雨窓美玲」

「じゃあ、行こっか」

「うん!」

私たちはポートマフィア傘下のレストランに着くとそれぞれ好きなものを注文した。

わたしはパンケーキ2つ。美玲もパンケーキ。敦はお茶漬け。料理を待ってる間、いろんな話をした。ポートマフィアでは珍しい10代ということでとても会話が弾んだ。彼女の異能はぬいぐるみに命を宿して人間みたいにする異能らしい。とても便利な異能だと思う。しかも異能力も作れるらしい。これはわたしも驚いた。代償があるにせよ、異能を生む能力。10歳で首領秘書だというのも頷ける。

食べ終わり、別れる時に美玲とこんな約束をした。ポートマフィアらしからぬ約束。

「また3人で食べようね!約束!」

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