第9話 事件の真相

「犯人は貴女でしょ?」

薄暗い部屋の中。人間ではない人形の瞳が妖しく光る。

「……何を言っているのかしら?」

「この一連の事件の犯人は貴女」

「だから、どこに娘を誘拐する母親がいるのかしら?」

「貴女はを誘拐していない。私が言ってるのは大量殺人の方」

桜がハッと目を見開き、後退する。

「……何のことかしら?」

「証拠はある。貴女が持ってきたグラス。そこに致死量の遅行性の睡眠薬がある。それが証拠」

「なら、動機はなにかしら!?

 ムカついたから?邪魔だったから?残念ねぇ、そんな理由じゃー」

「貴女は娘を守りたかった、ただそれだけ」

ズバリと言い切られ、桜は息を呑む。唾を飲み込む音が部屋に響き、桜の頬を汗が流れる。

「あなたは心臓の病気にかかった娘のドナーが欲しかった。でもなかなか見つからなかった。だから十代の人たちを自分で殺して、自分の娘の番が来るまで死体を提供してた」

「……そう仮定して、どうしてそれだけ殺しても失踪届が出されなかったのかしら?」

「あなたが出されるはずない人を選んだから」

「…例えば?」

「孤児。それも健康な」

「……っ……」

「イヴがこの辺の孤児院の買取表を調べた。あなたはいろんな孤児院から孤児を買っていた」

「………。」

「貴女の思惑に気づいて逃げ出した養女もイヴが保護した。証拠は揃ってる。もう、諦めたら」

桜の口元が歪んだ弧を描く。

「……ええ、正解よ。娘が苦しんでいるのに、私は何もやらないなんてことは出来なかったの。だから私が出来る最大のことをした。後悔なんてしていないわ」

「あなたは人殺し。もう、娘には会えない

 そうなることは分かりきってたはずなのに、どうして殺したの?

 どうして、あなたは娘ってだけで全てを投げ捨てられるの?」

「どうして、か…。それはね。母親なら自分の手を汚してでも娘を守りたいと思うのは当然だからよ」

パトカーのサイレンの音が虚しく響いた。

「動くな!! 連続殺人の容疑で逮捕する!」

「最後に一つだけ聞かせて。どうして美玲さまには薬を盛らなかったの?」

「…娘に、似ていたから。かしら?」

「そう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る