第5話 必要?

朝、探偵社に出社すると乱歩さんと社長、いや二人だけじゃなく、ほぼ全員が帰ってきていた。もう休暇は終わりのようだ。

だけど仕事をしている様子はなく、乱歩さんと社長、賢治くん以外のみんなは、なにか心ここに在らずと言った感じだった。なんだろう?と思ってぼくが聞くと、どうやら太宰さんが出社時間前に来ていたらしい。

だ、太宰さんが!? 昨日何かあったかな……

えっとー、確か美玲ちゃんを拾って、それでー、

ヤバい!確か八時に医務室に集合だったはず

後……1分!

僕は医務室まで全力疾走した。

僕が医務室に着くと、太宰さんは美玲ちゃんと何か話しているようだった。

「さて、美玲ちゃん、まずは私たちからのプレゼントだ。受け取ってくれるかな」

「これ、服……!」

「美玲ちゃんの服だよ。随分と血だらけになったからね」

たしかに…

あの事件により、彼女はの服には絶対通行人全員が振り向く量の血がついていた。

だけど、服……大丈夫かな?

僕みたいな変な組み合わせになっていないことを祈ろう。

さすがに女の子の衣服だし、ちゃんと選んでるよね…?

僕みたいにみんなが(適当に)選んだやつを組み合わせるとかじゃないよね?

「ありがとう! ずっと大切にする!」

「ずっとは無理じゃないかなぁ。そうだ、 これからは与謝野先生と一緒に住むことになるからね」

「与謝野先生? 太宰さんじゃダメなの?」

「……キミも一応女の子だしねぇ」

「?? まぁ太宰さんがダメって言うなら…」

僕はそんな会話を横で聞きながら、僕たちはいいんですか!?というツッコミを心の中でした。たしか、太宰さんが無理やり僕を説得…いや騙して鏡花ちゃんと同居させたんですよね?

「あと、少しおつかいを頼まれてくれるかい?」

そんな僕の心の中のツッコミは無視される。まぁ心の中で言ってるのだから当然だけど。

「うん!やる!」

「ありがとう。実はね、娘がが失踪したから見つけてくれという依頼がきてるんだ」

「その子を見つければいいの?」

えっ十歳程度の女の子にそんな難事件やらせるんですか!?

ちがいますよね?違うって言ってください!

「そうだよ」

いや、違うって言ってくださいよ!無理ですって!こんな小さな子に失踪事件の解決だなんて…

「あと、一人じゃ危険だから谷崎くんとナオミちゃんと一緒に行き給え。詳しい情報は谷崎くんが知っているから、また後で聞くといい」

「うん!」

「あっ来たね。谷崎くん、ナオミちゃん、あとはよろしくね」

僕は、谷崎さんに何か言ってください!という目線を送ったが、谷崎さんはそれに気づいているのかいないのか、苦笑いしながら「はい」と答えた。

「じゃあ気をつけてね」

「太宰さん! 帰ったら遊ぼうねー!」

「ああ、もちろんだよ」

「……待て太宰、どこに行く」

探偵社のオフィスに戻り、出て行こうとする太宰さんに国木田さんが聞く。

「えー?もちろん入水に決まってるじゃないかー」

「太宰ィィィィ!仕事をしろ!」

とまぁ毎日恒例の会話をしていた。

国木田さんも飽きないなあ 僕はもう諦めてるのに…

そして、仕事に戻ろうと振り返った時、谷崎さんたちと仲良く会話している美玲ちゃんが見えた。

上手くやれそうで良かった。でも、一つだけいいですか? 太宰さん。

僕……必要でしたかね?

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