第3話 僕の猫
ん……………?ほっぺが…………なに??
ザリザリされてる……ヤスリ?……痛いよ。
「にゃー!にゃー!」
「!!!!!」
その声に僕はびっくりして起き上がった。
僕の寝ていたすぐ横に、真っ黒いフワフワの毛をした子猫が鳴いていた。金色の目がとても綺麗だ。これは………あの時の子猫?……ううん……たぶん違う。でもいい。僕はこの子がいい。君も僕でいい?
「………お願いが叶ったのかな?」
「にゃ〜〜にゃ〜〜!」
子猫を胸に抱き、そっと小さい頭を撫でる。子猫は目を細めてゴロゴロと喉を鳴らした。
「………かわいい。僕……大事に出来るかな?ご飯とか、どうしたら良いんだろう……」
「にゃにゃ!」
子猫に顔を近付けると、フワフワの毛が鼻に当たった。たんぽぽの綿毛みたいに柔らかい。
今度は鼻を舐められた。そうか…舌がザラザラなんだね?ずっと舐められたら鼻が真っ赤になりそうだよ。
「ふふふ……。舐めなくてもいいよ。それともお腹減ったの?」
「にゃー!」
とりあえずこの子にご飯をあげなきゃかな。
その時、僕はやっと自分がまた知らない場所にいると気付いた。
子猫を抱きながら立ち上がると、そこは周りの壁が本棚で埋め尽くされた図書室みたいな場所だった。形は六角形。とても高い天井の一番上まで本がぎっしりと詰まっていて、てっぺんには硝子がはまっていた。その部屋の真ん中にはテーブルと椅子が一つ。そしてテーブルの上に一冊の本が置いてあった。
「………本がいっぱい………一番上の本って、どうやって取るの?僕じゃ届かないよ……」
「にゃーにゃ!」
本の部屋には扉が一つ。その先に進むとキッチンの様な場所に出た。ここならご飯があるかも。
シンクの並びには冷蔵庫の様な箱。更にその隣には様々な食品が置かれている棚があった。僕の知っている食べ物もあれば、知らない物もある。でもここに置いてあるって事は全部食用なのかな?
一先ず冷蔵庫らしき箱の扉を開けると、中にはお肉やお魚、牛乳も入っていた。
この子、もう歯が生えてるからミルクじゃなくても平気だよね?鶏肉でいいかな?それともお魚?ミルクも飲むかもしれないから両方出してみよう。
「……レンジは無いのか……じゃあお湯で煮ればいいかな?」
料理は家庭科の時にやったくらいしか経験がない。なんとなく生のお肉は駄目だと思ったから、お湯で火を通そう。
見つけたお鍋に水を入れてコンロのボタンを押す。やった火が点いた。
お湯が沸くまでもう少し部屋の中を探検しよう。キッチンには窓がついてて外が見える。外は緑に覆われてた。公園のそばなのかな?その窓の背面には玄関っぽいドア。
丁度、図書室の反対側にも同じ様なドアがあった。そこを開けて見るとベッドとチェストと机と椅子が置いてある。ここは寝室かな?
ベッドに腰掛けて子猫を膝の上に乗せると、子猫はまるで『抱っこしてろ!』と言っているかの様に、前足で僕の手に爪を掛けて引き寄せた。
「お肉を煮るまでここで待ってて?」
「にゃー!にゃー!!」
イヤイヤをしてるみたい。爪を服に引っ掛けて登って来た。かわいいなぁ〜もう。
再び抱っこして撫でると静かになる。でもこのままじゃ片手が使えない。僕は着ていたパーカーを脱いで逆向きに着た。パーカーのフードが顔の直ぐ下の良い位置に来る。そこに子猫を入れてキッチンに戻った。
お鍋の蓋がカタカタとしている。お湯が沸いたかな。包丁を探し出してお肉を小さく切ってお湯に落とす。スッとお肉の表面が白く変わった。どのくらい煮たら良いのかな?
少ししてから1つフォークで刺して取り出し、包丁で切ってみた。お肉の赤いのがなくなってる。これなら食べても大丈夫だよね?
子猫にあげる前に一口食べてみた。……何の味もしない…。そう言えば塩を入れてなかった。
子猫は味付け必要なのかな?さっき切った半分を子猫の口元に近付けると、クンクンと匂いを嗅いでからパクッと食らいついた。
………食べてる。大丈夫そう?不味かったら食べないよね?その一口を食べ終えると、お代わりをくれ!と僕の顎に手を当ててきたよ。
残りのお肉を切って冷まして、牛乳を温める。冷たい牛乳はお腹を壊すかもしれないからね。僕も温かくして少しお砂糖を入れたのが好きなんだ。だから、学校で出るパックの牛乳は苦手だった。
小皿にお肉と温めた牛乳を入れて、食卓テーブルに置いた。僕も一緒に牛乳飲もう。
子猫をフードから出して、テーブルに立たせるとちゃんとご飯だと分かってくれた。牛乳も飲んでる。
ふふ……口の周りが牛乳で白くなってる。ご飯が終わったら口を拭かなきゃね。
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