第2話 望む物って?
何も無い。
真っ白。
手で触れているから床は有りそうだけどそこも白い。影もない。それに音もしない。僕の息づかいも鼓動の音も。
ここは何処なのかな?気付いたらこの白い部屋にいた。せめて本でもあったら良かったのに。これじゃ寝るしかないよ。ぜんぜん眠くないんだけど。
暫くボーッとしていたら、白い部屋の一点に光が集まって来た。ライトには見えないし、人魂かな?人魂だとしたらここは死後の世界?
僕は死んだのかな?
そのまま光を見ていると、耳からではないのに言葉としての音が僕に届いた。それを認識出来るって不思議だ。
『何を望む……』
そんな言葉が僕に伝わって来た。
どうしてそんな事を聞くんだろう?それに聞き方が曖昧過ぎるよ。
『何を望む……』
また同じ事を……。
それに『何を』と聞かれても、直ぐには答えられないよ。でも、出来るなら好きな本を読んで、お母さんに捨てられてしまった猫と一緒に暮らしたい。
前に捨て猫を拾って家に帰ったら、次の日学校から戻った時には居なくなってたんだ。
お母さんが黙って捨ててしまったから。どこに捨てたのか聞いてもお母さんは教えてくれなかった。だから僕はお母さんは望まない。
それと僕は僕を好きになってみたい。せめてこれ以上嫌いにはなりたくない。
もし、本とか猫とか好きな物に囲まれて生活したら、ちょっとは嫌な気持ちが少なくなるかもしれない。だって僕の部屋には僕が欲しかった物がほとんど無かったから。
全部お母さんが勝手に選んだ物ばかり。
お母さんって何時もそう。一度だって『何が良い?』って聞かれた事が無いもん。他のお母さんは『今日は何が食べたい?』とかリクエストを聞いてくれるって話を知って僕は驚いたよ。
僕が選んだ物は唯一あの本だけ。一人暮らしをしたかったから『一人暮らし教科書』って本を図書カードで買って勉強してたんだ。あとは全部要らない物。お母さんも含めて。ぜーんぶ要らない。お父さんは家を出る時に何でお母さんも持って行ってくれなかったのかな?
ああ、そうか。
お父さんも要らなかったんだな。
お母さんも僕も。だから置いて行ったのか。
いいよな〜。お父さんだけ自由にして。ずるいよ。僕も自由にしたいよ。
そうしたら、自分でご飯を作って、掃除や洗濯も出来る様になるんだ。
『叶えたり……』
また不思議な声がした。
そうしたら光が拡散していき、白い部屋が光に覆われて僕の視界を完全に奪った。
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