僕の家と猫
いずいし
第1話 嫌いなもの
僕は僕が嫌い。
他の人も嫌い。僕は自分も含めて人が好きじゃない。
好きになるのってどうしたら良いのか全然分からない。特に僕は自分が失敗した時とか、調子に乗ってると気付いた時に自分で自分が嫌になる。
普通に遊んでいた友達も急に嫌になってしまう。それが何でか分からないんだ。電気のスイッチが切れるみたいに、急に僕の気持ちがそうなる。さっきまで仲良く遊んでいた僕の気持ちはどこ?今の僕となにが違うの?
他の人はそんな事無いのかな?もしあるならその時はどうしてるんだろう?教えて欲しいよ。
お母さんとおばあちゃんは、互いの悪口をいつも僕に聞かせるから2人とも嫌い。
特にお母さんは嫌い。
僕の大事にしていた本をベランダから投げ捨てたから。僕がお母さんの言う私立中学生の受験をしないって言ったら、僕の部屋に行って学校の教科書も本も文具もランドセルも何もかも庭に投げ捨てた。
きっとお母さんも言う事を聞かない僕が嫌いで、本当に捨てたかったのは僕なんだろうな。
僕は庭に散らばった物を見てそう思った。
僕はお母さんの声を聞くのも嫌になったから、そのまま外に出て行った。僕もお母さんをポイッと捨てられたら良いのに……。
家を出て公園の近くにある図書館へと向かった。図書館は好き。本も物語も図鑑も好き。無理なのは分かってるけど僕はここに住みたい。
でも本を読んでる途中で話しかけて来る司書の女の人は嫌い。せっかく良いお話を読んでいるのに、向こうの都合で中断させられるから。しかも、今日の天気とかその人のオススメとかどうでも良い話。僕は何の興味も持てなかったから、最近は拾ったイヤホンを耳につけている。その先はどこにも接続されていない。それがバレない様にポケットの中にしまってある。それからは話し掛けられなくなった。
閉館の時間まで本を読んで、ついでにトイレに行ってから図書館を出た。冬だからもう真っ暗だ。そう言えば上着を着てこなかったから寒いな。
公園を横切って家に向かう。帰りたくないけど、他に行ける所は僕にはない。
白い息を吐きながら空を見上げていたら、急にドンッと背中を押された。
振り返ろうとしたけど身体が前に倒れていく。
続け様にザクザクと嫌な音が背中でしてる。
うつ伏せになった僕の背中が熱くなり、何かが流れているのが分かった。
僕が覚えているのはそこまで。
あとは知らない。
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