第3話 爆薬
安田の冷徹な笑みに、日向は一瞬の隙も見逃さなかった。爆薬の起爆音が響く中、彼の目は鋭く、無駄な動きをしないように全身が張り詰めていた。
「ここで何をしようとしているのか分かっている」安田は言い放ち、次第に背後の仲間たちと共にその場を囲むように立ち位置を変えた。日向は深呼吸をして冷静さを保ちつつ、安田の言葉に耳を傾けながら、その動きに合わせて視線を走らせた。
そして、ふと目に入ったのはガソリン入りのバケツ。数個が周囲に散らばっており、何か意図的に配置されたように見える。さらに、他のテロリストが背負った噴霧器に注目した。機械的に設置され、まるでガソリンを撒き散らす準備ができているようだった。日向は即座にその仕掛けに気づいた。
「雪崩の引き金になるだけでなく、爆破の範囲を広げ、火災を引き起こすつもりだ…」日向は心の中で状況を計算する。安田の計画は一つの爆発だけにとどまらず、次々と連鎖的に起こる恐ろしい効果を狙っているのだ。
その時、安田はゆっくりと歩きながら、冷徹に言葉を続けた。「お前のような警察官には、もう何もできない。次に起こる爆発は、お前が思っている以上に大きい。山頂一帯が火の海になるだろう」
日向は一歩踏み出し、安田を直視した。その目は冷静さと同時に、鋭い殺気を帯びている。「お前の目的は分かっている。だが、ここで終わらせるわけにはいかない」
安田は笑みを浮かべながら、さらに歩み寄る。「終わらせる? お前にできるわけがない」
その瞬間、日向は安田の後ろにある爆薬のセットを確認した。さらに、その周囲に設置されたガソリンのバケツが、まるで次の爆発の導火線のように見えた。噴霧器が接続され、火花が引火すると、それらのガソリンは一気に燃え広がり、大規模な火災が発生するだろう。
安田の目的は、このスキー場全体を火の海に変えることだった。しかも、山頂を目指す人々を人質に取っている可能性が高い。日向は、それを食い止めるために戦わなければならない。
その瞬間、再び爆発音が響き、地面が揺れた。日向はすぐに足を止め、安田に向かって素早く動きながら、周囲を確認する。爆薬の仕掛けを解除しなければ、この場の全員が命を落とすことになる。しかし、その時間は限られている。
「もしお前がそれを引き起こしたら、お前の過去も含めて、全てが無駄になる」と日向は静かに言った。
安田は苦笑いを浮かべ、「無駄になるのはお前だ」と低く言った。
その瞬間、日向は彼の隙を突く。足元にあった岩を蹴り、突進して安田に近づいた。安田は驚く暇もなく、日向の動きを避けようとしたが、日向はすでに足元に設置された爆薬の信号装置に手を伸ばしていた。彼の手がその装置に触れると、僅かに震えた。
「お前の計画は終わりだ」日向は決定的な瞬間を迎える。安田が目の前で拳を握り、暴力的な叫び声を上げたが、その時にはすでに遅すぎた。
日向は素早く背後の噴霧器を押し倒し、ガソリンが撒き散らされる前に、引き金を引いた。爆薬が爆発し、山頂一帯が煙と火に包まれる。
安田は意識が薄れつつあった。これまでいろんなことがあったな。
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