第59話 ミッションスタート

 プレアデスのカウンター席に座った昴、澪、茉莉亜の三人。緊張した空気の中、茉莉亜が手元のノートにメモを取りながら話し始めた。


「実は、私、父親の会社の顧問弁護士さんに父親経由で状況を伝えてもらったの。」


 茉莉亜のその言葉に、昴は驚きの声をあげた。「弁護士…? 本当に相談したの?」


「ええ。口コミサイトのレビューを確認してもらったら、根拠のない書き込みが多すぎるって。これ、誹謗中傷とか名誉毀損に当たる可能性が高いみたい。すぐに動いたりは忙しいからできないみたい。だから私が、直接話してみます。その結果を澪さんと昴くんにもお伝えしますね。」


 澪は真剣な表情で茉莉亜に頭を下げた。


「茉莉亜ちゃん、本当にありがとう。でも、法的な手段なんて…少し怖い気もするわ。」


 茉莉亜は微笑みながら続けた。


「もちろん、穏便に解決するのが一番だと思います。でも、何もしないままだと、こんな不当な扱いを受けるなんて納得できません。 澪さんのカフェは、素敵な場所なんだから。」


 昴は静かに頷き、「ありがとう、茉莉亜さん。少し光が見えた気がする。」と感謝の言葉を口にした。


 千春はスマホを取り出しながら、話し始めた。


「カフェは、やっぱり見た目も大事になると思うの。プレアデスはすごくおしゃれだから、もっと広めれば絶対人気になると思う!」


「広めるって…どうやって?」昴が少し不安げに尋ねる。


「SNSよ! 今の時代、若い子はみんなSNSで情報を探すんだから。店の公式アカウントを作って、素敵な写真をどんどん投稿するの!」


 澪が少し戸惑いながらも興味を示した。


「でも、私たちにはそんな時間も技術もないわ。」


 千春は自信たっぷりに笑顔を浮かべた。


「任せてください! 私、ファッションとかカフェのことを投稿してるんだけど、フォロワーが数千人います。私のアカウントでも宣伝するし、公式アカウントの作成や運用のアドバイスもできます!」


「千春さん、本当に助かる!」


 昴が目を輝かせて答えると、千春は手をひらひらと振りながら笑った。


「友達なんだから当然でしょ。それに、昴くんのためでもあるけど、澪さんのカフェ、私も大好きなんだから」


「まず、インスタのアカウントを作りましょう。」


「次に、ターゲットの年齢層を意識すること。」


 千春はカフェの雰囲気を見渡しながら、スマホを片手に話し始めた。


「この店、すごく落ち着いてておしゃれだから、20代後半から30代くらいの女性が絶対好きな感じだと思うの。でも、もっと若い人も来てもらうなら、映える写真が必要ね!」


「映える写真…か。」


 昴は首をかしげながら、千春がどんどん話を進めていくのを聞いていた。


 千春が手際よくスマホを操作し始める。


「プレアデスって、星の名前が由来でしょ?それなら、星っぽいテーマで統一したデザインにするとかどう?」


「星っぽい…確かにいいかも。」


 昴は千春の提案に感心しつつ、自分でも何かできることはないかと考え始めた。


「あとね、投稿する写真は、商品のアップだけじゃなくて、店内の雰囲気とか、スタッフの笑顔とかも大事!」


「えっ、スタッフの笑顔って…僕も?」


「もちろん!昴くん、優しそうな雰囲気あるし、女性ウケいいと思うよ?」


「そ、そうかな…」


 顔を赤らめる昴に、千春は笑いながらスマホを向けた。


 千春は店内の様子を撮影しながら、澪にも協力をお願いした。


「澪さん、笑顔でコーヒー淹れるところ撮っていいですか?」


「え、私も?緊張しちゃうわね…」


 そう言いながらも、澪は慣れた手つきでコーヒーを淹れ、柔らかな笑顔を向けた。


「完璧!この写真、すごくいい感じ!」


 千春はスマホの画面を昴に見せた。そこには、プレアデスの温かい雰囲気が伝わる一枚が写っていた。


「キャプションは…どうしようか?」


「新メニューの紹介とか?あと、お店の雰囲気も伝えたいよね。」


 昴が提案すると、千春はうなずきながら打ち込んでいく。


 千春が作成したキャプションはこうだった。


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 ✨星空のように輝く時間をあなたに✨

 新メニュー「星空パフェ」が登場!ブルーベリーとバニラアイスの絶妙な組み合わせをぜひお試しください🌌

 落ち着いた店内で、ほっと一息つける時間を提供しています☕

 #カフェ巡り #星空カフェ #プレアデス


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「これでどう?」


 千春が投稿ボタンを押すと、昴はどこか緊張した面持ちで画面を見つめた。


「うん…いいと思う。でも、本当にこれで人が来てくれるかな…」


「大丈夫だよ!最初は少しずつだから、焦らず続けていこう!」


 千春の明るい笑顔に、昴も自然と頷いた。


 優翔もいつもの軽快な口調で話し始めた。


「俺の友達とか部活の仲間たちもさ、結構こういうおしゃれなカフェ好きなんだよね。だから、プレアデスの宣伝してみるよ!」


「宣伝って、どうやって?」


 昴が興味津々で尋ねると、優翔は少し胸を張って説明した。


「まずは口コミを広める感じで。デートに使えるおしゃれな場所とか、友達と一緒にリラックスできる場所って言ったら、絶対興味持つと思う。それに、SNSで投稿する奴もいるし、部活のメンバーにも話せば、どんどん広がると思うんだよ。」


 澪は感心したように頷きながら、「なんだか頼もしいわね。私も、若い人たちにもっと喜んでもらえるお店にしたいから、ぜひ協力してほしいわ。」


 優翔は力強く頷き、「任せてください!」と笑顔を見せた。その姿を見て、昴は仲間たちの頼もしさに胸を熱くした。


 茉莉亜、千春、優翔のそれぞれの提案を聞き終えた昴は、感謝の気持ちを胸に、改めて決意を固めた。「みんながこうして力を貸してくれるんだから、僕も頑張らないといけないな。絶対にこの店を守ってみせる!」


 その言葉に、澪も目を潤ませながら静かに頷いた。「そうね。私たちもできることを精一杯やりましょう。」


 仲間たちの支えと、それぞれのアイデアが揃い始めたことで、プレアデスの未来に小さな希望が生まれたのだった。



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 良ければこちらもご覧ください。

 ・直さんは冷静な顔で、俺を殺しに来る

 https://kakuyomu.jp/works/16818093090481722534


 ・ハリネズミ女子飼育日記:僕と彼女の365日間

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