第24話 スポーツ男子はモテる? それってマジ?

日曜日のフットサルコートはいつも以上に賑わっている。

昴、優翔、蓮、颯太の4人が2vs2でひとしきり盛り上がっていた頃、隣のコートから大勢の声が聞こえてきた。


「お、あっちも何かやってんじゃん」――蓮が軽く息を整えながら目をやると、

そこには男女混合のグループが揃っていた。

見た感じ、同年代の高校生だろう。フットサルをしに来たようで、楽しげな雰囲気が伝わってくる。


「ねぇ、一緒に試合しません?」

グループの一人、明るい笑顔を浮かべた男子が声をかけてくる。

「4人で来てるんですよね? ちょうどいい人数だし、軽く勝負しませんか?」


優翔が楽しげに笑い、「いいっすね!やりましょう!」と即答。

蓮も「やろうぜ」と意気込む。颯太も「こりゃ燃えるな」と準備運動を再開。

一方の昴は「え、マジでやるの?」と少し気後れするが、引きずられるように準備に入った。


試合が始まると、さっそく優翔が動いた。


「行くぞ、昴!パス出すから走れ!」


勢いよく蹴り出されたボールに合わせ、昴はとりあえず走り出す。


――次の瞬間、優翔が軽やかにドリブルを開始した。

その動きはしなやかで速い。まるでボールが彼の足に吸い付いているかのように、相手ディフェンダーを次々と抜き去っていく。


「速っ! 何あいつ!」

「すごい……!」


他校の女子たちからも驚きの声が上がる。


優翔のスピードに引っ張られる形で、ボールは確実に相手陣地に運ばれていく。

昴が息を切らしながらも必死に走ると、優翔はふとボールを横に流した。


「蓮、頼む!」


蓮がそこにいた。

彼の前にはディフェンダーが2人。だが、蓮は迷わない。

ボールを受け取ると、豪快に足を振り上げ、強烈なシュートを放つ――。

「ドンッ!」

ボールは一直線にゴールネットを揺らした。


「うおぉぉっ!」

「やばっ!」

「かっこいい!」


歓声が自然と上がり、他校の女子たちが「キャー!」と盛り上がる。


「決まったぜ」


蓮が涼しい顔で振り返ると、颯太が笑いながら手を叩いた。


「さすがだな、蓮。豪快だわ」


試合が進むにつれ、颯太のプレイが光り始める。

彼はゴールを狙うでもなく、華麗にボールを扱いながらチームを支える役割に徹していた。


「こっちだ、優翔!」


的確なパスを通し、ゲームの流れを完全に掌握する。


颯太の冷静な判断力と丁寧なボールさばきに、相手チームは次第に翻弄され始めた。

「何だよあいつ、動きが落ち着きすぎだろ……」

「ボールが全然取れねぇ……!」


昴も目を丸くしながら見つめていた。

(すごい……颯太ってこんなに上手かったのか)


颯太の指示に従い、優翔と蓮が前線で華々しく動き回る。


「颯太、ナイスパス!」


優翔が再びドリブルでゴールを目指し、蓮がサポートに入る――そして再びゴール。


「よっしゃー! また入った!」


優翔がガッツポーズを見せると、女子たちから黄色い歓声が飛び交う。

「超かっこいい!」

「シュートすごすぎ!」

「冷静でめっちゃうまいじゃん!」


昴は一人、少し離れた場所で彼らの活躍を眺めていた。


「……なんだよ、めっちゃモテてんじゃん」


心の中で、どこか羨ましさを感じながらも、自然と笑みがこぼれていた。



日が傾き始め、フットサルコートには長い影が伸びていた。

試合を終えた昴たち4人は、全員汗だくになりながらも満足そうな表情を浮かべている。


優翔が先頭を歩きながら、手を頭の後ろで組んで空を見上げる。


「いやー、今日マジで楽しかったな!」


その声には爽快感が満ちていて、まるで運動後の風がそのまま言葉になったかのようだ。


蓮が横に並び、軽く肩を回しながら笑う。


「お前らも最後まで走り切ったしな。昴、お前も頑張ったじゃん。」


気軽な調子で言われたその言葉に、昴は鼻をすすりつつ少しむくれた顔を見せた。


「……ま、まあな。」


そう呟きながら、汗を拭う手がどこかぎこちない。


「おーい、もっと胸張れよ!」


優翔が笑いながら振り返り、昴の肩をポンと叩く。


「あんだけ走ってボール追いかけたんだから、自信持てって!」


「わ、分かってるよ! 叩くなって……」


昴が軽く文句を言うが、その表情はいつもよりどこか緩んでいた。


颯太がそれを見ながら、のんびりと口を開く。


「それにしてもさ、フットサル、普通に面白かったな。最初は軽くやるだけかと思ったけど、白熱したし。」


「だな!」


優翔と蓮が同時に頷く。


「特に蓮のシュート、最後のやつとかエグかったよな。」

「お前が言うな、優翔。お前のドリブルの方が相手かわしすぎだろ。」

「颯太のパスも絶妙すぎて、楽にシュートできたんだよなぁ。」


「お前ら褒め合ってんじゃねぇよ……」


昴がぼそっと呟くと、3人が揃って振り向いた。


「なんだよ、昴も楽しんでたんだろ?」

「ま、まあ、ちょっとはな……」


ほんの少し照れくさそうに俯く昴。その背中を見て、3人は楽しげに笑い合った。



しばらく4人で歩き続け、街灯がポツポツと灯り始めた頃――。

昴がふと、ぽつりと呟いた。


「……スポーツできるやつって、やっぱりモテるんだな……」


その言葉は、無意識に口から漏れたような小さな声だったが、静かな帰り道にはっきりと響いた。


「は?」


優翔、蓮、颯太が同時に振り向く。

一瞬の沈黙の後――


「ぶっはははっ!」


優翔が真っ先に吹き出した。大声で笑い、昴の肩を叩く。


「お前、何言ってんだよ! 今日一番面白いぞそれ!」


「うるさい! 叩くなよ!」


昴が真っ赤になって振り払うが、さらに追い討ちをかけるように蓮が茶化す。


「まさかのそこかよ。まあ確かに、今日の女子たちのテンション見てたらそう思うのも無理ねぇか?」


「やっぱ気にしてたんだぁ~」


颯太がにやりと笑い、悪戯っぽく昴の肩を軽くつつく。


「な、なんだよ! 別にそんなつもりで言ったわけじゃないから!」


顔を真っ赤にしながら反論する昴。しかし、3人は容赦なく笑い続ける。


「はいはい、気にしない気にしない!」


優翔がニカッと笑いながら、軽い調子で言った。


「次はもっと鍛えて、女子たちにキャーキャー言われるくらいになろうぜ!」


颯太が追い打ちをかけるように冗談を言うと、昴は「うるさいよ!」と拗ねたように言い返した。


だが、その顔には怒りの表情はなく、どこか楽しげな笑みが浮かんでいる。


夕日に照らされ、道がオレンジ色に染まる。

優翔が軽くジャンプしながら振り向き、爽やかな笑顔で言った。


「また一緒に遊ぼうぜ!」


その言葉に、蓮と颯太も笑顔で頷く。


「おう、次も負けねぇからな。」

「次はもっと白熱しそうだな。」


昴はその3人を見つめ、一度息をついた後、苦笑いを浮かべた。


「……ああ、分かったよ。」


その返事は、少し気恥ずかしそうだったが、確かに嬉しそうな響きがあった。


4人の笑い声が、ゆっくりと夜へと染まる街に広がっていく。

空は夕焼けから藍色に変わり始め、ひんやりとした風が吹く中、4人のシルエットが並んで歩く。


(……悪くないな)


昴は心の中でそんなことを思いながら、仲間たちの笑い声に耳を傾けていた。


その道の先に、また次の楽しい日常が待っている気がして――。



夕暮れの道を、4人の笑い声がいつまでも響いていた。



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